2018 Fiscal Year Research-status Report
断層の活動性評価のための高速摩擦試験と鉱物・化学分析の高精度化に関する研究
Project/Area Number |
18K13977
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
清水 麻由子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (10751191)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 活断層 / 摩擦試験 / EPMA / clay-clast aggregate / CCA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,断層内物質の模擬試料と天然に存在する断層岩,及び断層運動を模擬した高速摩擦試験によって人工的に破壊させた岩石の物理的・化学的性質を,鉱物・化学分析,顕微鏡観察等により解明することで,断層の活動性評価の鍵となるような特徴(鉱物・化学組成の変化や変形組織等)を的確に捉えることを目的とする。 平成30年度は,断層ガウジを模擬するように鉱物組成を調整した人工試料に対し,山口大学の回転式高速剪断摩擦試験機を用いた高速摩擦試験を行い,試験後の試料に対して組織観察や電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)による面分析を実施した。 本研究では,実験系を極力単純にする目的で石英と黒雲母の2種類の鉱物の標準試料を混合することにより断層ガウジの模擬試料を調製した。また,高速摩擦試験ではガウジに蒸留水やMnなどの標準液を添加することで含水条件の試験も行った。ガウジを挟む岩石(母岩)は花崗岩または砂岩とし,回転速度は地震性すべりを想定し1 m/s,軸圧は地表付近の断層を想定し1 MPaまたは3 MPaとした。以上のような条件をそれぞれ変化させて,複数のパターンの高速摩擦試験を行った。試験後に母岩ごと試料を回収し薄片に加工した上で,偏光顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察と,EPMAによる面分析を実施した。 その結果,一部の試料のガウジ中に,clay-clast aggregate(CCA)とみられる組織が生じていることが明らかになった。CCAは,岩片や鉱物片の周りを細粒の粘土質物質が同心円状に取り囲んだ組織であり,地震性すべり速度における摩擦実験で形成されたとの報告があるほか,天然の活断層でも確認されている。したがって,CCAの産状や化学組成に着目することにより,地震性の断層すべりを特徴づけるような物理的・化学的変化を見出すことができる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工試料を断層内物質として用いた岩石の高速摩擦試験を行うことができた。さらに試験後の試料について断層内物質の組織観察や化学分析を実施し,地震性の断層すべりを特徴づけるような物理的・化学的変化を見出す糸口となり得る特徴(CCA)を見出すことができた。以上より,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,CCAの産状や化学組成に着目して高速摩擦試験及び試験後の試料に対する分析を継続する。また,実際の活断層と非活断層それぞれの断層岩に対して観察や元素マッピング・鉱物組成分析等を行い,高速摩擦試験の結果と比較することにより,活断層を特徴づける元素の挙動や岩石組織の変化を抽出する。
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Causes of Carryover |
当初の見通しよりも少ない実験数で研究の糸口となる現象,すなわちCCAの形成を捉えることができたため,物品費や旅費の使用を抑えることができた。「次年度使用額」は,CCAの形成される条件の考察に必要な実験のための物品費・旅費に充てる。
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