2018 Fiscal Year Research-status Report
Denaturation of lignin by a novel enzyme from commensal bacteria
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18K14383
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Research Institution | Hyogo Prefectural Institute of Technology |
Principal Investigator |
今井 岳志 兵庫県立工業技術センター, その他部局等, 研究員 (30785241)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カーボンセンターラジカル / 過酸化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
実施計画に従い、組換えによる新奇酵素の大量発現および精製を実施した。その結果、十分量の当該酵素を完全精製することができた。次に当該酵素の反応条件や諸性質解明を試みた。その結果、当該酵素がペルオキシダーゼ活性だけでなく、脂肪酸の過酸化反応も触媒できることがわかった。これにより、当該酵素が自前で脂肪酸から過酸化物を調達可能な酵素であることが示された。白色腐朽菌などの場合は、この過酸化脂肪酸が直接リグニンを分解していると考えられているため、同様のメカニズムで当該酵素がルーメン内のリグニンを分解している可能性がある。
一方で予想外なことに、当該酵素が過酸化脂肪酸に限らず、過酸化水素も電子受容体として何らかの形で関わっていることがわかってきた。当該酵素をヘモグロビンやミオグロビンなどの典型的なヘムタンパク質が失活するような高濃度の過酸化水素に長時間曝しても、当該の酵素は一定のペルオキシダーゼ活性を維持しており、過酸化水素からヘムを保護する何らかのメカニズムを有していることが示唆された。さらに、解析がリグニンと比較して容易なタンパク質を電子供与体に見立てた分解実験により、当該酵素が過酸化水素存在下で基質となる電子供与体中にカーボンセンターラジカルを生じさせていることが示された。このカーボンセンターラジカルはリグニンの分解過程でも生じる重要な反応中間体であり、白色腐朽菌のリグニンペルオキシダーゼが触媒する反応などで確認されている。実際に、この反応は他のいくつかの典型的なヘムタンパク質やヘミンでは見られず、当該酵素特異的であることも明らかとなった。
これらの酵素反応試験の結果を踏まえ、引き続き研究実施計画に従って研究を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は過酸化脂肪酸とリグニン分解の関係のみに焦点を当て研究計画を進めていたが、研究を実施していく中で、過酸化脂肪酸ではなく、過酸化水素を基質として極めて珍しい反応を触媒することがわかった。さらに、概要中には記載しなかったが、この反応はリグニンの分解だけでなく、この細菌の生存戦略に関わる特定の機能も同時に担っていることがわかり、新たな研究テーマとしての広がりもみせている。そのため、順調な計画の進展だけでなく+αの成果が得られたと考え区分(1)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところ試験計画に従い順調に進展しているが、この後予定しているGC-MSを使用した代謝物特定のステップは、酵素反応試験の成果を反映して大きく変更する可能性もある。酵素反応試験で、予想以上に大きな成果が得られたため、早急に次のステップに移るのではなく、引き続きより精密にこの酵素の反応機序を解析するために時間とコストを割くほうがより大きな成果が得られると思われる。そのため、場合によってはこのGC-MSのステップを省く可能性を視野に入れいる。
一方、実際のルーメンを用いた遺伝子解析のステップは順調に準備が進んでおり、すでにルーメン内容物も得ているため、このまま計画に従って実施する予定。
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Causes of Carryover |
主に計画段階の試薬類カタログ価格と、実際の見積もり価格との差で生じたもの。次年度に試薬代として使用予定。
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Research Products
(1 results)