2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of whether the Entoloma clypeatum species complex is a parasite or symbiont for rosaceous fruit trees.
Project/Area Number |
18K14458
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
遠藤 直樹 鳥取大学, 農学部, 助教 (20776439)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イッポンシメジ属 / 培養株 / 菌根合成 / 植物体成長 / S/R比 / ホクシマメナシ / 物質転流 |
Outline of Annual Research Achievements |
バラ科植物のうち,特にリンゴ,ウメ,ナシ,モモ,アンズ,およびオウトウ等は国内外を通じて経済的に重要な果樹である.これらバラ科果樹に外生菌根様構造を形成するハルシメジ類が,宿主植物であるバラ科果樹の寄生菌と共生菌のどちらであるのかを明らかにするため,本菌群の菌株培養法および菌根合成法の確立,およびハルシメジ類が感染したナシ苗木の成長量の評価を行なった.研究の結果,担子胞子および外生菌根様構造より分離したハルシメジ類の菌株をホクシマメナシ無菌実生に接種すると,外生菌根様構造の人工合成が可能であった.接種法は菌糸体を直接植物体に接種する直接接種法よりも,斜面培地で培養した菌糸体に支持体を被せ,そこに宿主植物体を接種する斜面培地接種法の方が良好な外生菌根様構造の形成が見られ,また斜面培地接種法に用いる斜面培地には,MNC培地よりもHYG培地を,支持体には,バーミキュライトとミズゴケの混合物よりも,黒ボク土を用いた系の方が良好な外生菌根様構造の形成が見られた.また,ハルシメジ類感染苗と非感染苗の間の成長量を比較した結果,両者の間に有意差はほとんど見られず,S/R比のみ,感染苗木が有意に高い場合があった.また,葉はハルシメジ類感染苗の方が濃い緑色を示す傾向にあり,窒素吸収がハルシメジの菌糸体によって促進された可能性が示唆された.そこで,安定同位体15Nで標識した硝酸アンモニウムを用いて,ハルシメジ類感染苗と非感染苗の間の窒素化合物の転流について調査した結果,15Nは非感染苗で有意に検出された.すなわち,ハルシメジ類感染苗は15Nを選択的に取り込まないため,物質転流の評価法についてのさらなる検討が必要であると考えられた.以上より,ハルシメジ類は少なくともバラ科果樹の共生菌であると考えられた.
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