2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14510
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
板倉 光 神戸大学, 理学研究科, 日本学術振興会海外特別研究員 (40749040)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ウナギ属魚類 / 回遊開始機構 / ニホンウナギ / 銀ウナギ / 成長履歴 / 生息域利用 / 標識放流実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウナギ属魚類の降河回遊開始時の体サイズや年齢には大きな個体差があり、「どのような個体が秋季に降河回遊を開始し、どのような個体が成育場に留まるのか?回遊開始時の体サイズはどのように決まるのか?」といった回遊の意思決定プロセスについては、回遊開始を事前に個体レベルで予測することが困難であるために長い間謎に包まれてきた。本研究では、生殖腺の組織観察と標識再捕実験の組み合わせにより、秋季の回遊開始を春~夏季に個体レベルで予測できる方法を確立させ、さらに耳石の成長解析を組み合わせることによって、ウナギ属魚類の降河回遊開始に関わる一連の意思決定プロセスを明らかにする。 昨年度の標識放流実験の結果、秋季における春機発動個体の最大卵群卵径が未春機発動個体に比べ顕著に発達していることから、卵径を用いて春季に春機発動の有無を調べることで、ニホンウナギの秋季の銀化/回遊開始を個体レベルで事前に予測することができる可能性が得られた。本年度、さらに解析を進めたところ、6月採集個体に比べて、8月採集の春機発動個体の方が卵径が大きいことが分かった。その結果を用いて判別分析を行ったところ、全採集個体、6月採集個体のみを使った場合と比べて、8月採集個体のみを使った方がより正確に秋季の銀化/回遊開始を予測することができた。さらに、全採集個体を使用した場合であっても、肥満度や吻長などの他のパラメータを追加することで、予測精度の向上が見られた。 本年度はこれらの解析に加えて、島根県の神西湖で採集された個体の耳石微量元素分析による生息環境履歴の推定を実施した。また、耳石輪紋間隔および卵径についても測定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であった外部形態を用いた判別分析、島根県神西湖で採集した個体の耳石分析および卵径測定を実施することができたので概ね順調に課題が進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度は、以下の3つを実施する。 (1)卵径および各種形態パラメータから秋季の回遊開始を予測する統計モデルを確率させる。 (2)現在残っている耳石の輪紋間隔および卵径を測定する。 (3)1と2を用いて、島根県神西湖で採集した個体の回遊開始/残留個体の判別を行い、両者の成長履歴を比較することで、降河回遊開始に関わる一連の意思決定プロセスを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
絶滅危惧種を扱う研究であり、予定していたサンプル数がすでに確保できたため、それ以上の採集を行わなかった。来年度に、分析や解析、および成果公開のための学会、論文発表を充実させるために使用する。
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Research Products
(9 results)