2019 Fiscal Year Research-status Report
初期胚におけるクロマチン3次元構造確立メカニズムの解明
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18K14620
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 遼平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30756458)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クロマチン3次元構造 / リプログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体は受精直後、リプログラミングを受け、精子と卵子のクロマチン修飾が分化多能性を制御するパターンへと変化し、遺伝子の転写が開始される。この過程において、ゲノムの3次元構造も大規模に変化することが近年明らかにされつつあるが、その分子メカニズムは不明である。ゲノムの3次元構造の制御においてはコヒーシンやCTCFといった因子が中心的な役割を果たしていると考えられているが、受精卵におけるこれらの因子の動態は、細胞数の少なさなどの技術的な問題から解析されていない。本研究は、リプログラミング過程の細胞を大量に得られるメダカ胚を用いることで、コヒーシンとCTCFの動態を解析し、ゲノム3次元 構造への寄与を実験的に検証する。これにより、遺伝子発現制御の基盤となるゲノムの3次元構造が、動物の発生において最初にできあがる時のメカニズムを解明する。 これまでにCTCFおよびコヒーシンのクロマチン免疫沈降(ChIP-seq)をメダカ初期胚の10発生ステージで行うことで、メダカ発生過程における両タンパク質のクロマチンへの結合動態を明らかにすることができた。2019年度ではこれらのタンパク質がどのようにメダカ発生過程のゲノム3次元構造を制御するかを解明する目的で、CTCFにオーキシン依存性デグロン配列を付加したノックインメダカの作成を行った。このノックインメダカを用いることで、オーキシン依存的にCTCFタンパク質を迅速に除去することができ、そのゲノム3次元構造への影響を解析することが可能となる。CRISPR/Cas9を用いることでノックインメダカを4系統作成することができ、今後実際にCTCFタンパク質の除去実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおりメダカ初期胚におけるCTCFとコヒーシンの結合動態を明らかにし、その機能解析のためのノックインメダカの作製も完了した。これによりCTCF除去した胚におけるゲノム3次元構造への影響を検証することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は作製したノックインメダカを用いることで、CTCFを除去しゲノム3次元構造を解析する。これにより、CTCFタンパク質が発生過程においてどのようにゲノム3次元構造の制御に寄与しているかを検証する。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも効率よくCTCFとコヒーシンの結合動態データを得ることができたため消耗品費が抑えられた。また、コロナウイルス感染拡大により参加予定だった国際学会などが中止となったため、出張費が予定よりも少なかった。当該年度でノックインメダカの作製ができたため、研究のさらなる推進のために次年度にこのメダカを用いた解析実験が必要となり、次年度使用額をこれに当てる。
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