2018 Fiscal Year Research-status Report
タイトジャンクションによるPTENを介したガン化抑制メカニズムの解明
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18K14696
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
矢野 智樹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20546121)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タイトジャンクション / cingulin / AMPK / PTEN / YAP / p38 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞は細胞接着装置により隣り合う細胞と接着する事で上皮細胞シートを形成している。この上皮細胞シートが私たちの体を覆うように存在し、外界と体内を隔てる事により私たちの体は恒常性を維持している。この外界と体内を隔てるという重要な機能を上皮細胞にもたらしているものこそ、細胞接着装置の一つであるタイトジャンクション(TJ)である。申請者は超解像顕微鏡に代表される先端技術を用い、TJタンパク質であるcingulinと微小管との結合を明らかにし、論文として報告した。その後、TJを起点とした上皮細胞のがん化制御メカニズムの一端を明らかにするためにcingulinに着目して研究を進めている。本年度はcingulinが細胞のエネルギー恒常性を調節する主要因子であるAMPKによってリン酸化されることでcingulin分子の形態が変化し、この構造変化が微小管に結合するか別の細胞骨格であるアクチン繊維に結合するかを調整していることを見出し、論文として報告した。ガン化により細胞内エネルギー恒常性が変化することが知られており、本年度報告した論文はガン化とTJが密接に関わっていることを示唆しており、今後はPTENを含めたガン化制御のシグナル経路の詳細を解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はcingulinと微小管が結合することを見出し論文として報告していたが、その詳細なメカニズムは明らかになっていなかった。以前、cingulinと微小管の結合実験を行なった結果、cingulinのN末側にあるglobularなdomainが微小管に重要であることを見出し、さらに、その結合にはAMPKによるcingulinのリン酸化が大きく関わっていることを見出していた。本年度はcingulinのAMPKによるリン酸化が微小管結合能に与える影響を詳細に調べた。まず、cingulinタンパク質を精製し、low-angle shadowing法を用いてcingulin分子を電子顕微鏡によって観察した。その結果、cingulin分子には直鎖状の分子構造と球状の分子構造の2種類があることがわかった。また、AMPKによってリン酸化したcingulin分子は直鎖状の構造を、AMPKによってリン酸化されていないcingulin分子は球状の構造になることを見出した。Cingulinは微小管に結合するが、アクチン結合タンパク質であることも知られているので、AMPKによるcingulin分子のリン酸化が微小管に結合するか、アクチンに結合するかを検討したところ、AMPKによってリン酸化されたcingulinは微小管に、AMPKによってリン酸化されてないcingulinはアクチンに結合しやすい傾向が見られた。cingulinのドメイン解析も行い、cingulinのアクチンおよび微小管に結合するN末側にあるglobularなドメインのみではAMPKによってリン酸化されても微小管への結合能はリン酸化されていないものと比べて変化しないのに対し、アクチンの結合では、リン酸化されていないものの方がリン酸化されているものよりも強くなっていることが示された。以上の結果より、cingulinはAMPKによってリン酸化されることでcingulinの分子形態が変化し、微小管への結合能が獲得されることが明らかになった。本年度、見出した結果をまとめて論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は以前cingulinとPTENが相互作用していることをみいだしており、今後はTJを起点とした上皮細胞のがん化制御メカニズムの明らかにすることを目指す。WT細胞とcingulin KO細胞を共培養するとcingulin KO細胞がWT細胞に押しつぶされていくことをライブイメージンクにより確認している。そこで、この現象の原因がcingulinとPTENの結合によるものであるかを調べるため、WT細胞とcingulin KD細胞を共培養する中にAktの阻害剤、PI3Kの阻害剤を添加し、との形態形成への影響を観察する。また、cingulin KD細胞にPTENと結合するXXドメインを発現させ、形態形成を観察する。これらの実験によりPTENを介した細胞の力学応答メカニズムを示すことができることになれば、ガン細胞の力学応答メカニズムの一端を明らかにすることが可能になる所見になる。 cingulin KO細胞がWT細胞に押しつぶされていくことから、cingulinは細胞外からの力へ応答していると考えられる。細胞の細胞外力への応答は主にアクトミオシンを用いていると考えられ、アクトミオシンを制御するRhoファミリーの制御機構などを視野に入れて研究を進める。Cingulin KO細胞ではp38やYAPの局在がはWTに比べて細胞質に多くなることを見出しており、今後はこの変化についても検討を進めていく。
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Research Products
(1 results)