2019 Fiscal Year Research-status Report
筋作動因子-尿毒症物質クロストークを標的としたCKD誘発サルコペニアの治療戦略
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18K15069
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
榎木 裕紀 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (50813854)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サルコペニア / 慢性腎臓病 / 筋作動因子 / 尿毒症物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、慢性腎臓病 (CKD) 誘発サルコペニアにおける筋作動因子および尿毒症物質のプロファイルによる病態構造を基盤としたサルコペニアの予防・診断ならびに新規治療戦略を構築するための基盤的情報を明らかにすることである。昨年度の検討において、CKDモデル作製後12週目にかけてCKD病態の進行に伴ってサルコペニアが経時的に誘導されていること、また筋肥大と関連する筋作動因子のうち、irisinやapelinが減少していた。本年は、CKD時に体内に蓄積する尿毒症物質と筋萎縮病態における筋作動因子の関連性を明らかにするべく、尿毒症物質の吸着作用を有する活性吸着炭(AST-120)の投与による検討を行った。CKDモデル作製4週後に腎機能によりモデルをランダム化したのち、AST-120を8 w/w%で粉末給餌に混合した。CKD処置後12週後においてサンプルを回収し各種評価を実施した。その結果、AST-120の負荷群ではCKDで観察された骨格筋量の減少ならびに筋萎縮関連遺伝子であるatrogin-1およびmyostatinの誘導が抑制されていた。さらに筋肥大と関連の報告されているirisinやapelinの発現減少もAST-120の投与群では回復していた。そこで骨格筋培養細胞であるC2C12細胞に対して、sham、CKDまたはCKD+AST-120マウス血清をそれぞれ添加し、遺伝子発現解析を行った。動物モデル実験と同様にCKDマウス血清添加によってatrogin-1やmyostatinの発現が上昇しAST-120負荷マウス血清では、その上昇が抑制されていた。しかしapelinやirisinの発現変動は、CKDマウスならびにCKD+AST-120投与マウスいずれにおいても見られなかった。従ってこれら筋作動因子の発現とCKD病態ならびに尿毒症物質の関連については今後さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CKD誘発サルコペニアモデルに対する尿毒症物質を吸着する活性吸着炭(AST-120)を用いた検討を完了し、CKD誘発サルコペニアにおける尿毒症物質と筋作動因子の関連性について一部明らかにできている。さらにこれら動物モデル血清を用いて動物モデルで観察されたサルコペニア関連遺伝子発現変動について検討を行っており、その予備的結果を得ることができている。現在すでに、変動の見られた筋作動因子のうちから候補を抽出し、CKDモデルへの投与実験を進めている。以上のことから概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在進行中であるCKD誘発サルコペニアモデルに対する筋作動因子の有効性について評価を行う。さらにサルコペニア病態を詳細に検討するために運動機能試験 (トレッドミル、握力測定) のモデルも進行する予定である。In vitro培養細胞を用いた検討により尿毒症物質が筋作動因子発現に及ぼす影響ならびに筋作動因子がCKDマウス血清により誘導される骨格筋萎縮に及ぼす影響について検討する。さらに詳細な筋作動因子発現変動機序について各種阻害剤 (抗酸化剤N-アセチルシステイン、芳香族炭化水素受容体 (AhR) 阻害剤、PI-3K-Akt-mTOR阻害剤など) を用いた検討を進める。
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