2020 Fiscal Year Research-status Report
テストステロンによるシナプス結合制御からみる自閉症の発症分子機序の探索
Project/Area Number |
18K15349
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
柳下 楠 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (70799189)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テストステロン / ニューロリギン / ニューレキシン / 自閉症 / デグー |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症の発症に関与すると指摘されている分子の中でも、ニューレキシンとニューロリギンは特に注目されているシナプス接着分子である。ニューレキシンはシナプス前終末に、ニューロリギンは後シナプスに発現し、シナプス間隙にてお互いに結合している。この結合が、シナプスの形成や維持に重要な役割を果たしており、その結果自閉症の主要な障害である社会性行動に影響を与えていると考えられる。 本研究では、自閉症発症のメカニズムを明らかにするために、ニューレキシンとニューロリギンの結合に着目し、その結合強度を変化させるような分子を探索した。ニューレキシンはニューロリギンと結合する重要なドメインとして「LNSドメイン」を有している。ニューレキシンの他に、性ホルモン結合タンパク質もLNSドメインを有しており、これを介して性ホルモンと結合することが明らかになっている。このことから本研究では、ニューレキシンが性ホルモンと結合すること、性ホルモンがニューレキシンとニューロリギンの結合に影響を与えることを仮説として検証した。 本研究の結果、主要な男性ホルモンの一つであるテストステロンがニューレキシンと結合すること、その結果テストステロンがニューレキシンとニューロリギンとの結合に干渉し、結合強度が弱まるという結果を見出した。興味深いことに、女性ホルモンやコルチコステロンではこのような干渉作用は観察されなかった。これらの結果をまとめて、論文を発表した(Yagishita-Kyo et al., 2021)。 本研究の結果は、自閉症の顕著な男女差の原因をも説明し得るもので、発症の分子メカニズムを明らかにする重要な示唆になることと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた分子生物学的、生化学的な解析が順調に進行し、その結果をまとめて学術雑誌に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いて、分子間相互作用を検証してきたが、その結果をまとめることができた。今後は、テストステロンによるニューレキシン・ニューロリギン結合への干渉作用が個体レベルでも起こっているのか、そのために社会性行動が傷害されるのかを検証していく。
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Causes of Carryover |
効率的な実験を心掛けたためと、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため学会参加を控えていたため
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Research Products
(1 results)