2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15781
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 孝洋 京都大学, 医学部附属病院内視鏡部, 助教 (70812684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胃癌 / 腸上皮化生 / ゲノム異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、胃癌がどの細胞から発生するのかを明らかにするために、H.pylori感染に伴う高度萎縮性胃炎を背景に発生した早期胃癌症例について、非癌部胃炎粘膜に存在するゲノム異常の解析を行っている。 昨年度に検討したサンプル調整の方法に基づき、内視鏡的切除を行った早期胃癌の切除標本より非癌部粘膜を採取し、アルシアンブルー染色にて腸上皮化生を認識し、腸上皮化生及び非腸上皮化生を腺管分離法により一腺管ずつ単離した。12症例38腺管について、DNA抽出、全ゲノム増幅の後、全エクソン解析を施行した。非腸上皮化生には平均38か所の変異、腸上皮化生には平均74か所の変異を認め、全症例に共通して、腸上皮化生にゲノム異常が蓄積していることが分かった。 次に、一腺管ずつに存在する癌関連遺伝子の変異について調べたところ、腸上皮化生には多くの変異を認めたのに対して、非腸上皮化生にはほとんど変異を認めなかった。ある程度の領域に広がっているゲノム異常を、ターゲット遺伝子を絞って調べたところ、やはり腸上皮化生には既知の癌関連遺伝子の変異が含まれているのに対して、非腸上皮化生にはほとんど変異を認めなかった。コピー数異常についても同様で、腸上皮化生には、第8番染色体など胃癌によく見られるコピー数異常を認めたのに対して、非腸上皮化生には、コピー数異常を認めなかった。 以上より、H.pylori感染に伴う慢性胃炎粘膜においては、腸上皮化生が非腸上皮化生と比較して多くのゲノム異常が蓄積していることが分かった。この結果は、腸上皮化生を有する腺管が胃癌、特に分化型胃癌の起源になっている可能性を示唆するものであると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の検証作業により解析方法が確立できたため、今年度は順調に研究を進めることができた。 昨年度に検討したサンプル調整の方法に基づき、内視鏡的切除を行った早期胃癌の切除標本より非癌部粘膜を採取し、アルシアンブルー染色にて腸上皮化生を認識し、腸上皮化生及び非腸上皮化生を腺管分離法により一腺管ずつ単離した。12症例38腺管について、DNA抽出、全ゲノム増幅の後、全エクソン解析を施行した。同一症例のリンパ球をコントロールとして、一腺管毎に含まれている遺伝子変異を調べたところ、非腸上皮化生には平均38か所の変異を認めたのに対して、腸上皮化生には平均74か所の変異を認めた。癌関連遺伝子について、腸上皮化生には多くの変異を認めたのに対して、非腸上皮化生にはほとんど変異を認めなかった。 次に、腺管単位ではなくて、ある程度の領域における腸上皮化生及び非腸上皮化生よりDNAを抽出して、ターゲットを98遺伝子に絞って変異解析を行った。98遺伝子は、既知の癌関連遺伝子及び、一腺管毎の解析で変異の多かった遺伝子を選択した。これまで癌関連遺伝子と言われていない遺伝子については、腸上皮化生、非腸上皮化生ともに多くの変異を認めたが、癌関連遺伝子については、腸上皮化生に多くの変異を認め、非腸上皮化生にはほとんど変異を認めなかった。また、コピー数異常についても調べたところ、腸上皮化生には、第8番染色体など胃癌によく見られるコピー数異常を認めたのに対して、非腸上皮化生には、コピー数異常を認めなかった。 以上より、腸上皮化生を有する腺管には、腸上皮化生を有しない腺管よりも多くのゲノム異常が蓄積していることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析で得られたゲノム異常について、他の解析方法によりバリデーションをとり、正しい結果であるかどうかを検証する。 また、腸上皮化生にゲノム異常が多く蓄積されていることが分かったため、蓄積されやすい遺伝子の異常について、その機能を調べる。特定の遺伝子の機能を調べるため、胃癌細胞株を用いて、その遺伝子をノックダウンもしくは過剰発現させて、細胞の増殖能、浸潤能などを比較する。さらに、臨床検体を用いて、胃癌、非癌部の腸上皮化生、非腸上皮化生におけるその遺伝子の発現について、免疫染色により検討する。 次に、腸上皮化生にゲノム異常が蓄積しやすい原因を調べる。遺伝子変異のパターンから、ゲノム異常の発生メカニズムを推測することができることが分かっている。腸上皮化生のゲノム異常のパターンを非腸上皮化生と比較することでその発生メカニズムを推測する。さらに、推測されるメカニズムに関わる遺伝子の発現について、免疫染色により調べる。 また、ゲノム異常の蓄積しやすい腺管の特徴を解析する。腸上皮化生には、完全型、不完全型などいくつかの種類がある。ゲノム異常が蓄積しやすい腸上皮化生の特徴について免疫組織学的な解析により調べ、前癌状態と考えられる腺管を同定する。 それらの結果について論文にまとめる。
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Research Products
(2 results)