2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15781
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 孝洋 京都大学, 医学研究科, 助教 (70812684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胃癌 / 腸上皮化生 / ゲノム異常 / コピー数異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘリコバクター・ピロリ感染による慢性胃炎粘膜は,胃癌のハイリスクであることが知られている.本研究では,慢性胃炎粘膜を構成する各腺管に存在するゲノム異常を網羅的に調べることで,胃癌のハイリスク腺管の同定及び発癌メカニズムを明らかにすることを目的とした。 内視鏡的治療を行った早期胃癌11症例の非癌部胃粘膜を採取し、腺管分離法にて1腺管毎に分離した。腸上皮化生をもった23腺管、腸上皮化生のない13腺管よりDNAを抽出し、全ゲノム増幅を行った後に全エクソン解析を行った。また、比較のために、ピロリ菌感染のない胃粘膜より採取した腺管についても同様の解析を行った。1腺管あたりの変異数は、正常胃粘膜においては平均18.5個、腸上皮化生のない胃炎粘膜は平均32.2個、腸上皮化生をもった胃炎粘膜は平均81個であった。次に、腸上皮化生もしくは非腸上皮化生の腺管を集めて腺管集塊の解析を行った。腸上皮化生の72腺管集塊、非腸上皮化生の24腺管集塊についてターゲットシークエンス及びコピー数異常の解析を行ったところ、変異数は両者に差を認めなかったが、コピー数異常は腸上皮化生に有意に多かった。早期胃癌のコピー数異常と比較したところ、腸上皮化生に見られたコピー数異常は、粘膜内癌と同じようなパターンを呈していた。一方、非腸上皮化生粘膜には、コピー数異常をもった腺管は増殖していなかった。 本研究から、慢性胃炎粘膜を構成する腸上皮化生腺管には早期胃癌に匹敵する数の遺伝子変異と、早期胃癌と同じパターンのコピー数異常を認めることが分かった。これらの結果から、腸上皮化生腺管はコピー数異常を獲得しながら増殖し,胃癌が発生する母地を形成している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検体採取の方法、解析方法が決まってからは、非癌部胃粘膜のゲノム解析は順調に行えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によって得られた結果について、現在論文執筆、投稿の作業を行っている。その過程において、解析する症例数を増やす必要がある可能性がある。
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Causes of Carryover |
2020年度前半はコロナウイルス感染の広がりの影響で一時研究を十分に行えない時期があったため。現在進行中の解析に対して使用予定である。
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