2018 Fiscal Year Research-status Report
膵がん患者の腸内細菌叢の解明と治療応用への基盤的研究
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18K15800
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
柴 知史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (00797003)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 膵がん / 大腸がん / 腸内環境 / S-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、膵がん患者の糞便検体を採取し、その後、検体からDNAを抽出して、抽出したDNAを用いてシーケンスを行い、腸内細菌叢を同定する準備を進めることができた。 具体的には、国立がん研究センター中央病院へ来院された便潜血検査が陽性であった患者、大腸がん等が予想される患者を対象とし、大腸カメラを行う前に患者へ研究内容を説明し同意を得て、糞便検体を採取した。採取した検体(常温保存1検体、凍結保存3検体)を、研究所に設置している超低温フリーザーへ保存する流れを実際に行なって確認した。さらに、採取した糞便検体から、質の高いDNAを抽出し、シーケンスを行う作業の流れについても同様に確認した。 これらの研究から、大腸がん患者に特徴的な腸内細菌種が存在することを明らかにし、イタリアの研究グループ及びドイツの研究グループと共同研究を行い、2018年4月にそれぞれNature medicine へ報告した(Thomas AM, Shiba S, et al. Nat Med. 2019;25:667-678., Wirbel J, Shiba S, et al. Nat Med. 2019;25:679-689.)。さらに我々の研究グループは、大腸腺腫から進行大腸がんへ至る多段階発がんの過程で、腸内環境が劇的に変化することを明らかにし、大腸腺腫から早期大腸がんにおいて特徴的な腸内細菌種を発見し、Nature medicineへアクセプトされた(Yachida S, Shiba S, et al. Nat Med 2019 in press)。 このように研究の流れを確認することができたため、2019年度には膵がん患者の検体を収集し、研究を進めていく。現在、研究代表者らは、膵がん患者の診療を行なっている肝胆膵外科および肝胆膵内科の科長と話し合い、効率的な検体採取の流れを確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を進める上で予備的検討を行い、他がん種である大腸がん患者において、糞便サンプルの収集を行なったため、本研究課題の対象患者である膵がん患者の糞便サンプルの収集は遅れている。しかしながら、大腸がん患者での糞便サンプルの採取からDNAの抽出ならびにシーケンスによる解析に至る行程を研究代表者が自ら関わることが出来たため、研究の流れについては十分に検討することが出来た。一連の研究の流れを経験したことで、2019年度から膵がん患者において効率よく検体採取を行い、研究費の費用を抑える工夫についても実践できると考えている。国立がん研究センター中央病院では、年間80症例以上の膵がん患者が外科手術を受けることから、大腸がん患者で経験したメソッドを本研究課題へ応用することで、2019年度は膵がん患者の検体収集を速やかに行うことが出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を行う直前に行なっていた、大腸がん患者を対象とした腸内環境を検討する研究によって、大腸腺腫から大腸がんに進行する過程で腸内環境が劇的に変化することが明らかとなり、大腸がんの早期発見及び早期診断に応用できる可能性のある研究成果を報告することが出来た。これらの成果を他部署へアピールしつつ、共同研究者を募ることによって、本研究課題を速やかに進めることができるように研究代表者は調整していく。具体的には、国立がん研究センター中央病院で働いている診療科の先生方と密に連携をとり、検体採取の際には速やかに動けるよう、診療科の先生方とPHSやメールでのやり取りを行いつつ、本研究課題に同意された患者さんの検体をもれなく収集できるよう対応していく。
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Causes of Carryover |
本研究の解析に用いる膵がん患者の糞便サンプルは、現在収集中である。予備的検討で行なっていた大腸がん患者の糞便サンプルを用いて解析を行なったところ、ある程度まとまった数の検体を一度に解析した方が、解析を行う実務が一度で済むこと、より低いコストで解析を行うことができることがわかった。 したがって、現在収集している膵がん患者の糞便サンプル数が50症例ほどに達した際には、最初の解析を実施することを検討している。限られた費用の中で、より多くの検体を収集し、費用を抑えつつ効率よく解析を行うことで、質の高い研究結果を得るために、本研究にかかる研究費を次年度へ持ち越すこととした。
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