2018 Fiscal Year Research-status Report
医原性リンパ増殖性疾患の遺伝子変異解析による病態解明および治療反応性の予測
Project/Area Number |
18K16076
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日下部 学 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40804381)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / 医原性リンパ増殖性疾患 / 自己免疫疾患 / メソトレキセート / シーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
筑波大学附属病院と共同研究先である虎の門病院の血液内科症例コホートより、約60例の医原性リンパ増殖性疾患(OIIA-LPD)を同定した。それぞれの症例について免疫抑制剤内服の契機となった自己免疫疾患、免疫抑制剤の種類、予後、組織型などの臨床情報を抽出し、解析を行った。 その結果、組織型については既報と同様にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が約半数、ついで古典的ホジキンリンパ腫(HL)の頻度が高かった。しかしながら末梢性T細胞リンパ腫の頻度については筑波大学附属病院と虎の門病院とでその頻度に違いを認めた。この原因として病理組織診断が考えられた。セントラルレビューの必要性を認識し、筑波大学附属病院症例、虎の門病院症例をあわせて同一の病理診断医に依頼し、診断確認を行うこととした。 次にそれぞれの新鮮凍結標本またはFFPE固定標本から次世代シーケンサーによる解析のためのゲノムDNA抽出を完了した。FFPE標本のうち、CTガイド下針生検の検体などは検体量が限られてしまうため、充分な量のゲノムDNAを獲得できなかった。しかし、新鮮凍結検体と大部分のリンパ節生検FFPE標本からシーケンスライブラリ作成に必要なゲノムDNAを得ることができた。 抽出したゲノムDNAを材料とし、リンパ系腫瘍関連412遺伝子を標的としたHaloPlex HSカスタムキットを用いてターゲットエンリッチメントを約20症例にて行い、NextSeq500にてシーケンスを施行した。その結果、全シーケンスリードのうち95%以上が標的領域にマップされた。症例間、検体間でのデータのバラツキは解析に問題のないレベルであることが確認された。これらの結果から本研究計画の解析方法は問題のないことが確認できた。今後、当初の予定通り症例数を追加し、遺伝子変異解析、予後との関連についての解析をすすめてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筑波大学附属病院と共同研究先である虎の門病院の血液内科症例コホートからのOIIA-LPDの同定は順調に進んでいる。当初の予想どおり、2018年4月以降も新規の候補症例が発生している。予後解析に関しては観察期間がすでに登録された症例に比べて短期間となるが、ゲノムDNA抽出に有利な新鮮凍結標本の作成、状態の良いFFPE標本の入手が可能であり引き続き新規症例の登録を継続する。 これまでに症例登録、予後解析を行った結果を示す。筑波大学附属病院OIIA-LPD症例19例の2年全生存率(OS)は86%、無増悪生存率(PFS)は64%であった。一方、虎の門病院OIIA-LPD症例29例の2年全生存率(OS)は95%、無増悪生存率(PFS)は70%であった。 組織型については筑波大学附属病院、虎の門病院、どちらもDLBCL多く、ついでHLの頻度が高かった。組織型別に予後を解析したところ、虎の門病院症例では3年PFSがDLBCLでは81%、HLでは33%であり、統計学的に有意差に(既報と同様に)HLでの予後がDLBCLに比較し不良であった。 HaloPlex HSカスタムキットを用いた標的シーケンスを施行した。また、解析の完了した症例は約20例と限られるものの、組織型が末梢性T細胞リンパ腫OIIA-LPD症例でホットスポット変異として知られるRHOA G17V変異、DLBCL OIIA-LPD症例でCREBBP変異などを充分なシーケンス深度で検出、解析することが可能であることがわかった。 今後、当初の予定通り症例数を追加し、すでに得られた予後解析に遺伝子変異解析を加え、研究目的である予後との相関や治療適応判定に遺伝子変異を応用可能かなどを検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
OIIA-LPD症例の登録は今後も継続し、解析症例数を増やしていく。特に新規発生症例ではゲノムDNA抽出、シーケンス解析に有利な新鮮凍結検体の収集を積極的に行っていく。 組織型の確定は本研究において非常に重要な意味を持つため、セントラルレビューを同一の病理診断医に依頼し、診断確認を行うことを徹底していく。 他の解析方法などについては概ね順調に進んでいる。ライブラリ作成、シーケンスなどを行い、当初の予定に遅滞なく研究を進めていく。
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