2018 Fiscal Year Research-status Report
リンパ系腫瘍におけるエピジェネティック遺伝子異常の役割に関する網羅的な検証
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18K16079
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
古屋 淳史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (30748257)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / ドライバー異常 / 機能解析 / 次世代シーケンス / マウスモデル / CRISPRライブラリー / エピジェネティクス / in vivo |
Outline of Annual Research Achievements |
まずリンパ腫臨床検体で異常が認められるエピジェネティック関連遺伝子であるBCOR, DNMT3A, EP300, TET2などを含む80遺伝子について、マウスにおける相同遺伝子に対して12個ずつのsgRNAを含んだsgRNAライブラリーをGibson Assembly法を用いてレンチウイルスベクターにクローニングを行った。作製したsgRNAライブラリーレンチウイルスベクターのsgRNA配列部位をPCR増幅し、次世代シークエンサーを用いて解析を行い、各sgRNAが偏りなく含まれていることを確認した。 このsgRNAレンチウイルスライブラリーをCas9を恒常的に発現しているマウスから純化した造血幹前駆細胞分画に導入し、致死量の放射線量を照射した同系マウスに骨髄移植を行った。すると骨髄移植後3カ月後頃よりsgRNAライブラリーを導入したマウスの死亡が確認され、一方で空ベクターを導入したマウスでは死亡は認められなかったことから、sgRNAライブラリー由来の遺伝子異常が何らかの疾患を引き起こしているものと考えられ、実際に衰弱したマウスの形態学的、免疫学的解析を行ったところ、白血病やリンパ腫など、さまざまな種類の造血器腫瘍を発症していることが明らかとなった。さらに、造血器腫瘍を発症したマウスの腫瘍細胞から採取したゲノムDNAを用いて、sgRNA配列領域のシークエンスを行い、腫瘍細胞で濃縮されているsgRNAの同定を行った。すると一部のエピジェネティック関連遺伝子に対するsgRNAが濃縮されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、悪性リンパ腫で高頻度に異常が認められるエピジェネティック関連遺伝子に対して、設計したすべてのsgRNAが偏りなく含まれている良質なCRISPRレンチウイルスライブラリーを作製した。また、Cas9恒常発現マウスを用いることによって、良好なレンチウイルス感染効率を達成でき、in vivoでのスクリーニングを可能とした。さらに今回作製したライブラリーによって、骨髄移植後3カ月程度でリンパ腫を含むさまざまな種類の造血器腫瘍がほとんどのマウスで発症することが明らかとなった。発症したマウスのゲノムDNAを用いて濃縮されているsgRNAの同定にも成功しており、研究の進捗はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に得られた結果により、本手法が造血器腫瘍の発症に重要な遺伝子異常をin vivoでハイスループットに解析するための強力なツールであることが示された。現在低~中頻度にリンパ腫を発症することが期待される遺伝子改変マウスの造血幹前駆細胞を用いた同様の移植実験も並行して行っており、生存期間や表現型の変化について解析を行っていく予定である。さらに当初の計画通り、発症した造血器腫瘍、特にリンパ腫について、腫瘍細胞を用いて網羅的な遺伝子発現や、濃縮されていた遺伝子異常に関連するエピジェネティックマーク解析を行うことで、ゲノム異常の種類に応じた病態の解明および新規治療標的を探索する。
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