2020 Fiscal Year Research-status Report
急性骨髄性白血病におけるDUSP4の役割と治療応用
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18K16121
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
安東 恒史 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (90571357)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / DUSP4 / FLT3ーITD |
Outline of Annual Research Achievements |
FLT3-ITD (Fms-like tyrosine kinase 3 with internal tandem duplication) を持つ急性骨髄性白血病 (FLT3-ITD AML)は極めて予後不良な一群である。FLT3-ITD阻害剤はすでに実臨床で使用されているが、その効果は限定的であり十分とは言えない。そのため、FLT3-ITDに対する直接的な阻害剤に加え、FLT3-ITD signalingの下流やその制御機構を含めてターゲット分子を設定し、新規治療法の開発を行う必要があると考えた。現在、FLT3-ITD signalingの下流分子やその機能について様々な報告がなされているが、FLT3-ITDのリン酸化シグナル自体の制御機構を含めた病態解明はほとんどなされていない。代表者はこれまでの研究から、 FLT3-ITD AMLにおいてDUSP4(dual specificity phosphatase 4)の発現が増殖維持に必須である可能性を見出した。 正常造血においては、FLT3の下流リン酸化シグナルの恒常的活性化は起こっていない。一方でAMLにおけるFLT3-ITD存在下では下流シグナル経路であるERK1/2やSTAT5が恒常的にリン酸化され、この恒常的リン酸化は、DUSP4によって時間的、量的にコントロールされていることを発見した。このことは、DUSP4によるリン酸化のコントロールはFLT3-ITD AML細胞に特異的な増殖・分化の調節機序であり、DUSP4の機能阻害がFLT3ーITD AMLの新たな治療コンセプトとなるのではないかと考えた。 本研究でDUSP4のFLT3-ITD陽性AMLにおける役割を明らかにするとともに、DUSP4阻害剤がFLT3-ITD陽性AMLの治療薬候補となり得るのか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
FLT3-ITDを持つAML細胞株MV4-11にsh DUSP4をlenti virusを用いて導入し細胞増殖の変化について検討した。MV4-11細胞はsh DUSP4導入により増殖は抑制されることを示した。さらに、FLT3-ITD変異を持たない細胞株では増殖に影響を与えないことを示した。 一方で、sh DUSP4が導入された細胞ではFLT3-ITDの下流に存在するSTAT5,ERK1/2のリン酸化は促進されていた。細胞増殖を促進するSTAT5やERK1/2のリン酸化が促進しているという結果は、DUSP4阻害が細胞増殖を抑制しているという結果と矛盾するものであった。 そこで、リン酸化シグナルの時間的量的変化についてフローサイトメトリーを用いて詳細に検討したところ、本来のリン酸化シグナルはnegative feed backなどの機序で時間的にコントロールされていたが、DUSP4が阻害された細胞ではこの時間的リン酸化調節機序が失われていた。この適切なリン酸化調整機構が失われることで細胞増殖が抑制されるのではないかと考えた。 リン酸化調整機構が失われることで、AML細胞にどのような変化が起きているのかを明らかにすることを次の目的とした。この機序を明らかにするためには遺伝子発現の網羅的な解析が有効であるのでRNA-seqを用いた解析を行うこととした。RNA-seqを行うにあたり、DUSP4の発現が抑制された均一な細胞集団を用いること試みている。まず、sh DUSP4をLenti virusを用いて導入を行った。しかし、Lenti virusの感染効率が不十分なこと、その後に感染細胞をcell sortingを行うも、もともとDUSP4が抑制された細胞では細胞増殖抑制がかかり脆弱であることなどから、十分な細胞が確保できておらず、現時点では結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
DUSP4のAMLでの働きを明らかにするためには、DUSP4発現を抑制した細胞株でのRNA-seqは必須であると考えている。Lenti virusに拘らずに、他の方法でのshRNAの導入や細胞株を変更する事で(MOLM13など)研究を進めたいと考えている。また、逆にBa/F3,HL-60,KG1aなどの細胞株にsh DUSP4を導入しそれらの細胞株にさらにFLT3-ITDを導入する事も検討している。 すでにDUSP4阻害剤の開発に関して報告があり(Bull.Korean Chem. Soc.;2014:2655-59 Hwangseo et al)、これらの阻害剤の使用も検討したいと考えている。 これらの結果からAMLにおけるDUSP4は発現の意義を明らかし、治療ターゲットと成り得るのか検討する。 AML発症におけるドライバー変異としてRas、bcr-abl、Jak2などその他のリン酸化シグナルが知られている。これらの変異とDUSP familyの役割についても検討する。
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Research Products
(5 results)