2018 Fiscal Year Research-status Report
ライブセルイメージングによるMPN発症分子間相互作用の可視化
Project/Area Number |
18K16126
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
水上 喜久 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (30756698)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 分子シャペロンCALR / 骨髄増殖性腫瘍 / サイトカイン受容体c-MPL / ライブセルイメージング / KDEL / キメラタンパク質 / 黄色蛍光タンパク質Venus |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄増殖性腫瘍(Myeloproliferative Neoplasm; MPN)の治療に用いられるJAK2阻害薬をはじめとした薬物は、血球数のコントロールや全身症状を改善するが、当該疾患を根治できないため、MPN発症メカニズムの理解に基づく分子標的薬の開発が求められている。これまでに申請者らは、変異型CALRが、サイトカイン受容体c-MPLに結合し、受容体を恒常的に活性化することで、MPNを引き起こすことを明らかにした。しかし、変異型CALRによるTPO受容体c-MPLの活性化メカニズムの詳細は不明である。本研究では、変異型CALRと蛍光タンパク質Venusのキメラタンパク質を作成し、ヒト巨核球系細胞株UT-7/TPO(TPO依存性)に発現させることで、TPO非依存的な増殖を示すことを確認した。ライブセルイメージングを用いた解析から、野生型CALRは小胞体に局在しているのに対し、変異型CALRはゴルジ体に局在することを明らかにした。変異型CALRの局在は、フレームシフト変異によって野生型CALRの持つ小胞体滞留シグナルKDELの欠損によると考え、野生型CALRからKDELを除去したところ、その多くは小胞体に局在していた。このことから、変異型CALRのゴルジ体への局在のシフトはKDELの欠損だけによらないことがわかった。さらに、c-MPLと蛍光タンパク質CFPのキメラタンパク質を作成したところ、キメラタンパク質を発現させたBa/F3細胞のTPO依存的な増殖が見られた。これらの変異型CALRとc-MPLのキメラタンパク質が本来の機能を保持していることから、変異型CALRによる腫瘍化発症メカニズムの解析に役立つツールができた。これらを用いて、細胞内のどこでこれらのタンパク質が相互作用し、どこでc-MPLを活性化するかを明らかにすることで、MPN治療に大きく貢献できるといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、CALR と蛍光タンパク質Venusを融合させたキメラタンパク質を作成し、ヒト巨核球系細胞株UT-7/TPOに発現させたところ、変異型CALRを発現させた細胞では、サイトカイン非依存的に増殖が見られた。同様に、c-MPLとCFPのキメラタンパク質を発現させた細胞では、TPO反応性を示し、本来の機能をもつキメラタンパク質を合成することができた。 野生型CALRは小胞体に局在しているのに対し、変異型CALRはゴルジ体に局在していることがライブイメージングと免疫染色の結果から明らかになった。この局在の変化が腫瘍化に寄与するかもしれないと考え、野生型CALRのカルボキシル末端にあるER滞留シグナルKDELを除去することで、小胞体からゴルジ体へと局在をシフトさせることを試みた。しかし、野生型CALRからKDELを除去しても、ゴルジ体には一部しか局在せず、その多くはERに局在していた。また、TPO非依存的な増殖も見られないことがわかった。 次に、変異型CALRではC末端に塩基性アミノ酸を多く含む点に着目し、野生型CALRのC末端の酸性アミノ酸を塩基性アミノ酸へと置換させたところ、やはり局在は小胞体であり、腫瘍原性も示さなかった。以上から、変異型CALRの腫瘍化は、KDELの欠損やアミノ酸の電荷の変化によらないことがわかった。 次に、野生型と変異型のCALRの局在の違いは、小胞体からゴルジ体へのタンパク質の輸送に関与すると考え、ブレフェルディンA(BFA)処理後にライブイメージングを行ったところ、野生型CALRではほとんど変化が見られなかった一方で、変異型CALRの局在は、ゴルジ体から小胞体へとシフトした。以上の結果から、野生型と変異型CALRの局在は、KDELやCドメインの電荷チャージではなく、小胞体とゴルジ体間のタンパク質の輸送の違いによって引き起こされることがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、野生型CALRが小胞体に局在するのに対して、変異型CALRはゴルジ体に局在することがわかっている。この局在の違いが、腫瘍原性に寄与する可能性がある。そこで、小胞体とゴルジ体間のタンパク質の輸送速度を比較するために、蛍光消光後回復(FRAP:fluorescence recovery after photobleaching)を用いて、野生型CALRと変異型CALRの輸送速度を検証する。 さらに、小胞体とゴルジ体間のタンパク質の輸送以外にも、局在の違いを生じさせる可能性を検証する。これまでに申請者らは、野生型CALRに比べて、変異型CALRは細胞内における蓄積量が顕著に低いことを確認している。この結果から、変異型CALRは細胞内でプロテアーゼやオートファジーのはたらきによって、積極的に分解されている可能性があると考えた。この可能性を検証するために、プロテオソーム阻害剤MG132や、オートファジー阻害剤クロロキンでそれぞれ処理することによって、細胞内における蓄積量や、局在に違いが見られないかをそれぞれ検証する。 これまでに申請者らは、変異型CALRは、TPO受容体c-MPLと相互作用することによってc-MPLを活性化することを明らかにしてきた。しかし、これらが細胞のどこで相互作用するかを明らかにするために、Forster共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer; FRET)の検出することを試みる。
|
Causes of Carryover |
研究消耗品の割引などによって、超過することのないように購入していった結果、わずかではあるが余ってしまった。 文房具などの備品を購入する予定。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] Homomultimerization of mutant calreticulin is a prerequisite for MPL binding and activation2019
Author(s)
Araki M, Yang Y, Imai M, Mizukami Y, Kihara Y, Sunami Y, Masubuchi N, Edahiro Y, Hironaka Y, Osaga S, Ohsaka A, Komatsu N.
-
Journal Title
Leukemia
Volume: 33
Pages: 122-131
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Skewed megakaryopoiesis in human induced pluripotent stem cell-derived haematopoietic progenitor cells harbouring calreticulin mutations.2018
Author(s)
Takei H, Edahiro Y, Mano S, Masubuchi N, Mizukami Y, Imai M, Morishita S, Misawa K, Ochiai T, Tsuneda S, Endo H, Nakamura S, Eto K, Ohsaka A, Araki M, Komatsu N.
-
Journal Title
British journal of haematology
Volume: 181
Pages: 791-802
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Presentation] JAK2V617F変異アレル数はヒト血球分化を変化させる2018
Author(s)
Takei H, Edahiro Y, Mano S, Masubuchi N, Mizukami Y, Imai M, Morishita S, Misawa K, Ochiai T, Tsuneda S, Endo H, Nakamura S, Eto K, Ohsaka A, Araki M, Komatsu N.
Organizer
第80回 日本血液学会学術集会
-
[Presentation] The Zygosity of JAK2V617F Determines the Disease Entities of Myeloproliferative Neoplasms By Modulating Erythropoiesis but Not Megakaryopoiesis.2018
Author(s)
Takei H, Edahiro Y, Mano S, Masubuchi N, Mizukami Y, Imai M, Morishita S, Misawa K, Ochiai T, Tsuneda S, Endo H, Nakamura S, Eto K, Ohsaka A, Araki M, Komatsu N.
Organizer
第60回 米国血液学会
Int'l Joint Research