2018 Fiscal Year Research-status Report
食物中脂質組成とホルモンの相互作用によるエネルギー代謝調節の新規メカニズムの解明
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18K16228
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
青谷 大介 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (80600494)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中鎖脂肪酸 / 肥満 / グレリン / 摂食 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満症は、脂肪蓄積を基盤として糖脂質代謝異常や血圧異常を認める疾患概念である。動脈硬化性疾患の発症頻度が高まるために早期の治療介入が必要とされている一方で、予防や治療が未だに困難な状況である。現在、国内で使用可能な抗肥満薬はマジンドールのみであるが、本薬剤は安全性への配慮から投与対象や投与期間が厳しく制限されており、肥満に対する薬物療法は充足しているとは言い難い。 本研究は、胃由来ホルモングレリンの摂食促進作用に対する中鎖脂肪酸の阻害効果を検討し、中鎖脂肪酸の肥満症の治療創薬としての意義を検討することを目的としている。 本年度は、動物を用い、中鎖脂肪酸の摂食抑制効果に関する検討を行った。正常マウスに中鎖脂肪酸(オクタン酸とデカン酸)配合餌を摂取させると、末梢から持続投与したグレリンによる摂食促進反応が減弱していることを確認した。また中鎖脂肪酸配合餌の給餌のみによっても、摂食量が減少していることを見いだした。さらに絶食をかけた正常マウスに中鎖脂肪酸を経管投与し、投与後に再摂食させるとやはり摂食量が抑制され、この抑制効果は投与した中鎖脂肪酸の鎖長によって異なることも確認した。 以上より、中鎖脂肪酸の抗肥満作用の解明とそれを基にした肥満症の新規治療法の開発につながりうる知見を得た。今後、正常および病態モデル動物を用い、グレリン抵抗性誘導に基づいた抗肥満治療戦略の提唱のために更に詳細な検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討において、グレリンによる摂食促進に対する中鎖脂肪酸の阻害効果が確認された。これは、グレリンの慢性持続投与での検討であったが、グレリンの単回投与での効果に関しては今後の検討が必要である。 また中鎖脂肪酸配合餌の給餌のみによっても摂食量が減少していることから、内因性グレリンの摂食促進作用に対する阻害効果の可能性も示唆された。これらの結果から、絶食のような内因性グレリン濃度がさらに上昇する条件下であれば、中鎖脂肪酸の効果をより顕著に検出できる可能性があるが、この点についても検討が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
一般に、グレリンの摂食促進作用に関するシグナル経路には2つあると考えられている。ひとつは、グレリンの産生部位である胃の迷走神経末端に存在するグレリン受容体に作用し、求心繊維によって中枢神経に伝達され、孤束核を介して視床下部へ摂食シグナルを伝達する経路、もうひとつは血液脳関門を通過して視床下部弓状核に存在するグレリン受容体への直接作用である。これらのシグナル経路に対する中鎖脂肪酸のsite of actionについて、特に視床下部を中心として解析を進めていく。具体的には、グレリン投与時の視床下部における遺伝子発現変化、グレリンの下流に存在するニューロペプチドを投与した際の摂食効果などを、中鎖脂肪酸給餌下において検討する。 さらには肥満のモデル動物を用い、中鎖脂肪酸のグレリン阻害作用を介した抗肥満効果について検討する。
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Causes of Carryover |
動物実験に関しては、体重や摂食量など代謝パラメーターの測定が中心であった。また餌や試薬類は研究室内で入手可能なものから使用したため、購入した試薬類は当初の計画よりも少額となった。 今後、遺伝子発現の解析のために、プライマー、プローブ、試薬類の購入が多く見込まれる。また薬物の脳室内投与に必要なカニュレーション留置に関連する物品類、マウスの購入費用、餌の追加購入費用、飼育費用なども必要となってくると思われる。
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