2018 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌におけるProkineticin2因子の臨床応用に向けた検討
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18K16347
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
呉林 秀崇 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (10794589)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 血管新生因子 / Prokineticin2 / PROK2 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌における最大の予後規定因子は血行性転移であり、とりわけ肝転移は最大の予後規定因子である。現在大腸癌治療において血管新生因子は治療標的因子となっており、新規治療薬にて予後の延長が得られているものの、未だ十分ではない。我々は、大腸癌におけるProkineticin2(PROK2)の役割を検討する研究を行なっている。 本年度の実績として、切除標本におけるPROK2蛋白の発現と臨床組織学的因子の関連を一つ達成した形で報告することができた。概要としては、当科にて手術加療を行なったヒト大腸癌患者での切片を用いて、パラフィン包埋切片を作成し、PROK2モノクローナル抗体を一次抗体とした免疫化学組織染色を行った。PROK2蛋白の発現は血行性転移、とりわけ肝転移と関連することを突き止め、予後との関係をあきらかにした。また低PROK2発現大腸細胞株にPROK2遺伝子を導入し、発現させると、Mock細胞と比較して、有意に肝転移が認められることを指摘した。これらの内容については、当教室員とともに論文化した。これまでの報告でも、ヒト幹細胞にPROK受容体が存在することが指摘されており、今回の検討をふまえて、大腸癌の肝転移にPROK2が密接に関与する可能性が示唆された。また大腸癌原発巣におけるPROK2 mRNA発現の検討についても、血行性転移と関わることが示唆され、学会発表を行なっている。これらの研究は大腸癌の血行性転移のメカニズムの解明や、新規バイオマーカーとしての可能性の探求に有用な研究であったと考える。また今回の検討からさらに発展させ、PROK2抗体の治療薬としての可能性を検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画項目5つのうちの2つに一定の成果が得られていることから上記評価とした。しかしながら、新規治療標的因子としての役割の検討については、まだ導入実験段階であり、今後さらなる進展が得られるように努力していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討により、PROK2が大腸癌の新規バイオマーカーとしての役割の可能性が示唆され、再発予測因子などになりうるのか、あるいは治療標的因子になりうるのか、リキッドバイオプシーなどに応用が効く項目となりうるのかなど今後の検討につながったと考えられる。さらに症例数を増やし、術後補助化学療法の意義など臨床的な議論に当たる部分につなげることができれば、さらなる発展が得られると考えられる。
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