2018 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌における蛍光X線分析を用いたoxaliplatinの腫瘍組織中動態の解明
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18K16367
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永吉 絹子 九州大学, 大学病院, 医員 (90761015)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | oxaliplatin / 蛍光X線分析 / 白金製剤 / 抗癌剤耐性 / SPring-8 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、蛍光X線分析という工学的アプローチを用いて、oxaliplatinを投与した大腸癌の腫瘍組織中の白金や生体内必須元素の局所かつ微量な分布を可視化することで、抗癌剤の腫瘍内動態や細胞活性の変化を明らかにすることを目的としている。 【1.大腸癌組織中の白金や生体内必須金属元素の分布と抗腫瘍効果との関連性の検討】術前にoxaliplatinを含む抗癌剤治療を受けた進行大腸癌の切除組織標本30例に対して、大型放射光施設SPring-8で蛍光X線分析測定を行った。腫瘍組織中の白金分布に関して、腫瘍上皮では腫瘍の治療効果に伴う変性部位に白金の集積が多く、逆に腫瘍間質では、治療効果の乏しい症例ほど集積が多い結果であった。また、白金とFeやZn, Cu, K, Caといった生体内必須元素との集積の相関を検討したところ、治療効果によってCuの分布に差があることを確認した。 【2.抗癌剤感受性予測因子の同定】oxaliplatinを使用した進行大腸癌の切除標本における遺伝子発現プロファイル解析を行い、治療効果によりROS (Reactive oxygen species) 関連遺伝子の発現の変動を確認した。 【3.大腸癌マウスモデルを用いた抗癌剤の送達および排出機序の解明】当研究室では、各種ヒト大腸癌細胞株に対してoxaliplatin耐性株を樹立している。そこでoxaliplatin感受性/耐性細胞をそれぞれマウスに同所移植し、大腸癌マウスモデルを作成した。 【4.癌微小環境中の間質の改変による抗癌剤耐性機序の解明】大腸癌マウスモデルに対して、抗線維化薬Pirfenidoneを用いて腫瘍間質の改変による抗腫瘍効果および薬剤送達を評価している。これに対して蛍光X線分析を行うことで、oxaliplatinの腫瘍内動態および耐性機序の解明に寄与すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大型放射光施設SPring-8による蛍光X線分析測定の機会が限られており、また1サンプル当たりの測定にも3-4時間程度要する。また、定量性の確認のため各金属元素に対しての検量線作成や、測定のための条件設定に時間を要したため、ヒト大腸癌サンプルおよび大腸癌マウスモデルに対する測定がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト大腸癌組織および大腸癌マウスモデルの腫瘍に対する蛍光X線分析測定を継続し、白金や生体内必須金属元素の分布をもとに臨床病理学的データと照らし合わせ、抗癌剤耐性に関わる薬剤送達や排出機序についての検討を継続する。 また、大腸癌サンプルに限らず、白金製剤を使用する他の癌腫に関連するサンプルからも蛍光X線分析による研究を推進し、本研究に関連する実験手法の確立を目指す。 また、大腸癌マウスモデルに関しても、線維芽細胞との共培養を行うことで生体内の腫瘍微小環境を再現することができ、抗癌剤耐性に関する間質の影響を検討する。
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Causes of Carryover |
大型放射光施設SPring-8による蛍光X線分析測定の機会が限られており、測定症例サンプルの集積が進んでいないため。 次年度は測定施設使用料および研究用試薬、器材などの消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)