2018 Fiscal Year Research-status Report
新規治療につながる抗癌剤耐性卵巣癌の分子標的:EMT転写因子ZEB1
Project/Area Number |
18K16795
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
坂田 純 愛知県がんセンター(研究所), がん予防研究分野, 研究員 (40778297)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗癌剤耐性卵巣癌 / EMT転写因子ZEB1 / classⅠHDAC阻害剤 / CTGF |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌治療において、抗癌剤耐性の獲得は予後に影響する重大な因子である。本研究ではEMT転写因子ZEB1が上皮性卵巣癌の抗癌剤耐性や転移浸潤、腫瘍血管新生に同時に関与する可能性について解明することを目的とし、ZEB1と他の因子との相互関係を明らかにしながら難治性再発卵巣癌治療の標的として実用化を目指したい。実施計画として挙げた1~3の項目について、得られた結果について詳細を示す。 1,2.共培養系での癌細胞および腹膜中皮細胞から分泌されるTGF-β刺激による抗癌剤耐性細胞の相違を解析する目的で、ZEB1の発現の強い抗癌剤耐性細胞と腹膜中皮細胞の上清中のTGF-β濃度をELISAにて測定し、コントロールと比較しTGF-β濃度が高いことを確認した。さらに抗癌剤耐性株をsiRNAでZEB1抑制をしたところ、TGF-β濃度は有意に低下した。これによりZEB1発現癌細胞から分泌されるTGF-βによりさらなる抗癌剤耐性の獲得や転移浸潤の促進に関与している可能性が推測される。 今後ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)培養系においてもその管腔形成能に対する効果、血管新生抑制効果を確認し、ZEB1がVEGF産生および腫瘍血管新生に与える影響を解明する予定。 3.classⅠ HDAC阻害剤がZEB1関連の薬剤耐性を回復させることはすでに報告があるが、ZEB1高発現抗癌剤耐性卵巣癌細胞にも応用し、HDAC阻害剤によるZEB1発現の抑制をWestern blottingで確認した。それにより抗癌剤耐性が有意に改善しており、今後はその分子学的機序を検討する。 抗癌剤耐性卵巣癌細胞株のマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行ったところ、高発現因子としてCTGF(Connective tissue growth factor)があり、当因子の機能評価およびZEB1との相互関係についても評価中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
もともと研究を遂行していた名古屋大学から愛知県がんセンターへ異動となり、今までは診療科内に研究部門が併設していたが、現在は研究施設が別部門であり、連携不足により基礎研究が進んでいない状況です。また大学とは違い、診療科の人員不足により最も優先すべき臨床診療の比率が非常に高く、治験や臨床試験などの数も多く、診療時間外もその対応に追われている。すこしでも研究に寄与できるよう、前施設での抗癌剤耐性再発卵巣癌症例を集積および解析し、現行における抗癌剤耐性を改善する治療の可能性について、可能であればその分子学的解析も加え、論文化を目指す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に記したように、引き続き難治性卵巣癌におけるZEB1およびTGF-βの抗癌剤耐性、転移浸潤、血管新生抑制の分子生物学的解明と、その治療薬として注目するHDAC阻害剤の効果や有用性につき評価を継続していく。 また、抗癌剤耐性卵巣癌細胞株のマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行ったところ、高発現因子としてCTGF(Connective tissue growth factor)があり、当因子の抗癌剤耐性などの高悪性度に関与する機能評価およびZEB1との相互関係についても評価中である。 卵巣癌症例の施設の強みを生かし、抗癌剤耐性再発卵巣癌症例を集積および解析し、現行における抗癌剤耐性を改善する治療の可能性について、可能であればその分子学的解析も加え、論文化を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
研究施設の異動により使用計画および進行状況に遅れたでているが、引き続き難治性卵巣癌におけるZEB1およびTGF-βの抗癌剤耐性、転移浸潤、血管新生抑制の分子生物学的解明と、その治療薬として注目するHDAC阻害剤の効果や有用性につき評価を前施設および現施設と連携を取りながら継続していく予定。 また、抗癌剤耐性卵巣癌細胞に関わるCTGF(Connective tissue growth factor)についても分子生物学的な検討を行うため、細胞培養に関わる試薬および各抗体などの試薬を購入する目的に使用する予定である。
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