2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a genetic diagnostic method for phonological disorders and evaluation of language development in children with hearing loss.
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18K16890
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
菅谷 明子 岡山大学, 大学病院, 助教 (20600224)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 音韻障害 / 人工内耳 / 言語発達 / トリオ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工内耳装用児は、一般的に術後の言語発達に大きなばらつきがあることが知られている。これまで、新生児聴覚スクリーニングにより難聴の早期診断を受け、早期の介入(生後6か月以内の補聴器やその後の人工内耳の装用)が適切に行われ、かつ知的な能力に障害がないにもかかわらず、言語発達に著しく遅れを認める児を臨床的に経験しており、このような児の中には音韻意識の障害、つまり音韻障害があると考えられており、本研究ではこうした背景の児の言語発達や遺伝学的背景について検討した。 我々は、まず、人工内耳術後の言語発達が不良で音韻障害が疑われる人工内耳装用児につき、人工内耳の装用閾値、遺伝学的検査結果、5歳時点での表出語彙数・発話明瞭度を検討した。その結果、該当症例が208例中10例(4.81%)で、8家系のうち同胞例が2家系あった。男性5例、女性5例と男女差なく、全例遺伝学的検査を施行しており、GJB2遺伝子変異が6例検出された。また、人工内耳の装用閾値は35.26±4.45dBと比較的良好であった。以前に検討した5歳児時点での表出語彙数の中央値が1773語であったのに対して、音韻障害を有する児は614.57±495.48語と極端に少なく、5歳時点での発話明瞭度:63.03±11.55%と構音の不良が顕著であった。この結果は、日本耳鼻咽喉科学会にて報告している。 さらに、音韻障害を呈する人工内耳装用児2家系のトリオ解析を行い、1家系ではシグナル伝達に関与する原因候補遺伝子を検出しているが、もう1家系ではこうした変異は解析した範囲では明らかではない。 今後、言語発達が正常な人工内耳装用児のデータの収集や、症例数を増やして音韻障害の候補遺伝子を探索する試みが必要であると考えられた。
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