2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K16905
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
松岡 理奈 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80433770)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 先天性難聴 / 胎児聴力検査 / 聴覚スクリーニング / 胎児心拍数 / 聴覚閾値 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎児心拍は外部からの新規の刺激に対して心拍上昇を認めることが分かっており特に妊娠32週以降では100%に近い陽性率を認める。今回は妊娠20週の妊婦及び胎児を対象とし、この現象を利用し胎児音響刺激装置と分娩監視装置を用いて、胎児には馴染みがないとされる2000Hzの音刺激に対する反応を観察した。刺激前に3分間無刺激の状態で胎児心拍を計測し、心拍基線を同定したのちに3回音刺激を行い、音刺激前後の胎児心拍数の上昇によって反応ありと判定した。妊娠32週未満では刺激後60秒以内の10bpm以上の心拍数増加を陽性とし、妊娠32週以降では15bpm以上の心拍数増加を陽性とした。今回は妊娠20週以降の健康でリスクの少ない妊婦及び胎児を対象とした。この検査は環境因子が強く関係し、母体の状況、胎児の状況、計測の仕方を統一し、データー収集の時点で適当と思われる症例は39症例となった。計測は音刺激直前直後で行った。妊娠20週から音刺激による心拍数の上昇を認め、後期になるにつれて音刺激に対する胎児の心拍数上昇率は高くなり、陽性と判断した例は妊娠20週から妊娠27週以前に比べて、妊娠28週から妊娠37週の胎児で有意に多かった。妊娠32週から妊娠37週では3例が検査音に無反応であったが3例とも静睡眠状態にあると考えられた。音刺激に対する反応は、妊娠32から妊娠37週において静睡眠状態と考えられる状態の場合に有意に低下した。一方、妊娠20週から妊娠37週では、胎児の睡眠状態の差に関連した音刺激に対する応答に有意差はみられなかった。胎児の睡眠状態を考慮に入れた場合に妊娠28週以降で静睡眠状態を除くすべての胎児において音刺激による心拍数上昇を認めることが分かった。なお、出産後に現行されている新生児聴覚スクリーニングを実施し39例が正常聴力であることを確認し聴覚刺激による変化の裏付けの一つとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立案した計画に沿って妊娠20週以降の妊婦及び胎児を対象として音刺激装置による音響刺激の後の心拍数変化を捉えることができた。また解析の結果、心拍数変化は睡眠状態に左右されることが示唆された。当手法は胎児聴力検査法として有効であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本スクリーニングシステムは刺激音の音圧レベルと振動数は可変である。今後は音圧レベルや振動数を変化させ、確立された測定方法により胎児の可聴閾値を明らかとする。音刺激装置の改良も随時行っていく予定である。現段階では正常聴力の胎児のデーターのみであるが今後さらに検査を実施し、難聴児のデーター収集も行い正常聴力の胎児との比較をおこなう。また睡眠状態以外の検査結果に関連する因子について解析を行う。引き続き順天堂医院にて検査データーの収集および解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究追行のための基盤となる機器はすでに整備されているので実験に必要な消耗品を必要とした。データ解析および蓄積、週1回行っているミーティングや研究成果公表のための学会発表ならび現在準備中の英文論文に必要なパソコンおよび周辺機器についても購入した。日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会にて研究成果の報告および情報収集を行い、交通費等の支出があった。また、蓄積したデータ解析を行う為の人件費として次年度に使用予定のため、繰越金が発生した。その為次年度には実験および解析作業、ミーティング、学会発表や論文発表のための経費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)