2019 Fiscal Year Research-status Report
The sealing effect assessment of obturator in maxillectomy patients with intraoral air pressure
Project/Area Number |
18K17115
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小飯塚 仁美 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (80783349)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 上顎欠損 / 顎義歯 / 口腔内圧 / 発音 |
Outline of Annual Research Achievements |
上顎腫瘍切除術後の患者は、鼻腔・副鼻腔に交通する実質欠損を生じ、咀嚼・嚥下・構音に重篤な障害を抱えている。顎義歯を装着することで機能回復が図られるが、顎義歯の封鎖性は術後のQOLやADLに響影を与える。ことに、発音時の鼻からの息漏れはコミュニケーションを障害する。顎義歯の封鎖性は、発音や構音に必要な口腔内圧産生に重要な影響を与えているといえる。従来、顎義歯の封鎖性は、発音時や嚥下時の呼気や液体の鼻腔への漏出にて評価され、患者や術者の主観的評価によるものが多かった。よって、顎義歯の封鎖性を客観的に評価する方法は今までに無く,発音時の口腔内圧を測定することで,顎義歯の封鎖性を客観的に評価することは有意義である。 これまで我々は、顎義歯を装着した上顎欠損患者と健常者を被験者として、小型大気圧センサを用いて/pa/発音時の口腔内圧を測定し、発音時における口腔内圧の圧力変化を観察した。同時に普通騒音計による発音時の音圧を測定し、口腔内圧と音圧の関係について検討を行った。その結果、発音時の口腔内圧と音圧は正の相関があり、上顎欠損患者は顎義歯装着により発音時口腔内圧が上昇したことから、顎義歯は上顎欠損患者の口腔内圧形成に寄与していることが示された。また、被験者間で口腔内圧の変化の程度に差を認めたことから、顎義歯装着の有無による口腔内圧と音圧の相関係数と回帰式の傾きの関係より、顎義歯の封鎖性の良否を判別する可能性を示唆するに至った。さらに、発音時の口腔内圧の圧力発生時間について検討を行ったところ、上顎欠損患者は健常者に比べ、口腔内圧の上昇が少なく圧力発生時間も短縮したことから、上顎欠損部からの呼気の漏出により口腔内圧が抜けていることを認めた。また、顎義歯装着により口腔内圧は上昇を認めたが、圧力発生時間は健常者より短縮しており、顎義歯装着患者の発音時の口腔内圧の形成様相の特徴を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
小型大気圧センサを用いて、顎義歯を装着した上顎欠損患者と健常者の発音時の口腔内を測定し、同時に普通騒音計による発音時の音圧を測定した。発音時の口腔内圧と音圧は相関があり、顎義歯装着により口腔内圧が上昇したことから、顎義歯は上顎欠損患者の口腔内圧形成に寄与していることが示された。また、被験者間で口腔内圧の変化の程度に差を認めたことから、顎義歯の封鎖性の良否を判別する可能性を示唆するに至った。さらに、圧力発生時間について検討を行った。顎義歯装着により口腔内圧は上昇し、圧力発生時間は健常者より短縮したことから、顎義歯装着患者の発音時の口腔内圧の形成様相の特徴を示唆した。 上顎欠損患者(同一の被験者)において、顎義歯非装着時と、旧義歯、新義歯装着時の口腔内圧と音圧を測定した。旧義歯装着時は、発音時の口腔内圧は、非装着時に比べてある程度の上昇を認め、一定の顎義歯による封鎖効果が得られていることを認めた。一方、新義歯装着時は、発音時の口腔内圧は旧義歯より大きくなり、音圧の増加にともなう口腔内圧の上昇量も大きくなった。このことから、新義歯装着により、より高い封鎖効果が獲得されていると考えられた。また、旧義歯と新義歯の口腔内圧と音圧の変化より、個々の顎義歯による封鎖効果を比較することが可能であり、顎義歯による治療効果を定量的に示す可能性を示唆するに至った。 コロナウイルス感染拡大にともない被験者を対象とした測定を中止している。新たなデーターの採得が行えず、データの検証も行えないため、研究の進捗状態はやや遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
上顎欠損患者(同一被験者)において、旧義歯と新義歯について発音時の口腔内圧を測定し、顎義歯による封鎖効果を比較することで、発音時の口腔内圧を指標とした顎義歯の治療効果の評価方法について検討する。あわせて口腔内の欠損形態や残存歯の状態、軟口蓋の可動性、顎義歯の形態についての情報を収集する。口腔内圧による封鎖性の定量評価をもとに、口腔内圧の状態や顎義歯の形態に関しての情報を説明変数として、顎義歯の封鎖性に影響を及ぼす因子について検討を行う。
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Causes of Carryover |
令和元年度は、研究に必要な機材は概ねそろっており、新たな機材購入の必要が生じなかった。次年度は、測定装置の老朽化のため、測定装置を新たに購入する予定である。消耗品として、気圧センサ・機器消毒用薬剤も購入予定である。また、研究に関わる書籍や論文の購入費、データ解析補助ための人件費、研究成果発表にかかる経費も計上する。本研究成果を論文として発表するための論文校閲費,別刷費,投稿費への使用も予定している。
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