2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of educational model of life and death that integrates knowledge of professionals and values of citizens
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18K17599
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 在也 千葉大学, 大学院看護学研究科, 特任講師 (30758131)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 対話理論 / オープンダイアローグ / 成人学習理論 / アドバンスケアプランニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、専門職による医療的知識と市民の経験や価値が統合され、市民がエンドオブライフについて考え、話す機会を提供可能とするような、市民を対象とした死生観教育の新しい学習モデルの開発を目的とする。初年度は、「エンドオブライフについて市民が考え、話す」という視点を、1)看護学の視点及び2)教育学の視点で、既存の研究を概観し、整理を行った。 1)については、Advance Care Planning(ACP)の概念の東アジアにおける定着と課題について整理し、International Psycho-oncology Society年次大会(香港)にて、研究発表を行った。本発表の内容は、千葉大学GPの研究成果報告書に掲載予定である。また、地域における市民を対象としたACPの実践に関するシステマティックレビューのプロトコルの策定をし、現在共同研究者とプロトコルの論文作成を実施中である。 2)については、ACPの概念と実践に対して、成人学習理論のとりわけ対話理論がいかなる意味で応用可能かについての文献検討を蓄積してきた。その萌芽的成果は、日本エンドオブライフケア学会学術集会(東京)で研究発表した。また、倫理学・看護学・哲学の諸専門家との議論を積み重ねるため、「対話の理論勉強会」を組織し、3回実施した。 これらの結果得られた知見を概説すると、ACPの専門職に向けた定義はSudore(2017)が策定しているが、未だ市民の経験や価値を十分反映した内容となっていない。すなわち、エンドオブライフを迎えたないしは意識せざるをえない一般市民にとって、治療選択を含む意思決定を支援するための有効なモデルは、まだ実装されていない。教育学の学習理論は、人の思考や対話を安全に引き出すための重要な示唆を与えているが、実際にどう対話の場を創出するかについては、より踏み込んだ具体的モデルが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は、専門職の知識と市民の価値を統合する学習モデルの基礎となる知見を、医療・看護分野の研究及び教育学分野の研究のレビューから明らかにすることであった。実績概要に記したように、これらは概ね進捗している。ただし、地域におけるACP市民教育のシステマティックレビューについては、システマティックレビューの方法論上の要請で、複数名のレビュアーが必要であり、研究チームの組織に若干の時間を要した。本科研は、個人研究であり、先行研究の概観をするだけであれば、システマティックレビューの厳密な方法を採る必然性はなかったのだが、目的のためによりエビデンスの高い方法論が採れる可能性があるのであれば、採用すべきと考え、研究計画を変更した。しかし、あくまで本科研は、システマティックレビューそのものの作業及び研究内容を成果とはせず、本来の研究目的の通り、それらの知見を応用しての学習モデルの構築を目的とすることは変わらない。
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Strategy for Future Research Activity |
1)成人教育理論及び対話の理論がACPの実践に与える示唆についての研究:上記課題の学会発表(生命倫理学会)、及び論文化を目指す。 2)ハイデガー及びアーレントの死生観と対話の哲学についての研究:本研究の哲学分野からの示唆を参照するための研究である。唯物論研究協会、総合人間学会での萌芽的研究発表を目指す。 3)地域におけるACP市民教育のシステマティックレビュー:共同研究者とともにプロトコルの策定及びレビューを推進する。 4)専門職の知識と市民の価値を統合するエンドオブライフの学習モデルの策定:1)から3)の成果を参照し、実践的な学習モデルを策定し、パイロット施行する。パイロット先は、千葉市内の公民館を候補とする。
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Causes of Carryover |
本研究の初年度は、文献検討が中心であり、PC等の基礎的な物品以外は主に書籍の購入代が多くを占めた。及び、国内学会への出張旅費等であった。当初見込んでいた、アルバイトを雇用しての研究推進は、来年度以降の公民館でのパイロット調査に持ち越される運びとなっており、その分の人件費相当が次年度使用額へと移った。 来年度は、国際学会への参加費、文献費、公民館でのパイロット調査に関わる人件費・謝金が発生し、今年度より支出が多くなることが見込まれている。
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Research Products
(2 results)