2021 Fiscal Year Annual Research Report
Examination of a new evaluation method using the sound heard from inside the ear
Project/Area Number |
18K17674
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 優実 九州大学, 大学病院, 言語聴覚士 (90788605)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 嚥下障害 / 耳内嚥下音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は嚥下時に耳内から聴取する特徴的なクリック音(以下,耳内嚥下音)を、嚥下機能検査に臨床応用することを大きな目標としている。これまでの研究において、耳内嚥下音は嚥下機能正常例では嚥下出力のシークエンスの定点を示していることが示唆された(山口他,2019)。次に、嚥下障害群ではどのような特徴がみられるのかを検討した。咽頭期嚥下の時間的推移の指標である喉頭挙上遅延時間(Laryngeal elevation delaytime:以下,LEDT)は、延長していると嚥下障害が生じる可能性が高いとされている(進,1994)。そのため今回、脳血管障害・神経筋疾患症例において耳内嚥下音を計測し、LEDT正常群と延長群に分けて比較検討した。その結果、LEDT正常群においては嚥下機能正常例を検討した先行研究と同様に、耳内嚥下音が生じて嚥下物が梨状陥凹に到達した時間(O-P)と耳内嚥下音が生じて喉頭が最大に挙上した時間(O-M)、および梨状陥凹に到達してから喉頭が最大に挙上した時間(=LEDT)とO-Mは有意な相関関係を示していた。一方、咽頭期嚥下の惹起性が低下したLEDT延長例では、O-Pは負の値をとるほどP点は大きく左方移動していたが、その場合においてもO-Mは平均値付近から大きく逸脱するような延長は認めず、O-Mの時間的順次性も保たれていたことが明らかとなった。つまり、咽頭期嚥下の惹起性が著しく低下した症例においても、一旦咽頭期嚥下が開始されれば嚥下出力のシークエンスはほとんど変動しないことを示していた。これらのことは、中枢における嚥下のパタ―ン形成器(CPG)の性格をよく反映しているものと考えられる。以上を第45回日本嚥下医学会で発表した。 本研究において、耳内嚥下音は嚥下機能の時間指標の基準点として嚥下機能評価に臨床応用できることが示唆された。
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