糖尿病に起因する筋や運動ニューロンの障害をターゲットとした運動療法の開発

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K17773
• Research Institution: Health Science University
• Principal Investigator: 玉木 徹 健康科学大学, 健康科学部, 助教 (30712814)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 糖尿病 / 運動療法

Outline of Annual Research Achievements

我々は過去に、糖尿病ラットにおける運動ニューロンや筋の障害は速筋・遅筋といった筋のタイプに強い影響を受け、筋線維の萎縮は速筋線維に強く観察される一方、運動ニューロン障害は遅筋を支配する運動ニューロンに生じやすいことを明らかにしてきた。糖尿病患者に対する運動療法は一般的に有酸素運動とレジスタンス運動といった運動様式の異なる運動を同時に行うことが推奨されているが、前述した筋線維タイプに依存したまだらな筋/運動ニューロン障害に対する各種運動様式の効果は明らかになっていない。そこで、糖尿病に関連して生じる運動ニューロンや筋障害に対する運動様式の異なる運動の効果を比較することを目的に本研究を行った。2019年度までに運動様式が異なる水泳運動とトレッドミル運動を用いた低負荷運動を長期間（12週）実施し、両運動療法が糖尿病モデルラットで観察される速筋優位に生じる筋張力減少と遅筋優位に生じるや収縮弛緩時間の延長に有酸素運動が与える影響や検討した。その結果、トレッドミルと水泳運動に決定的な差はなく、速筋で生じる筋張力減少は有意な改善が認められなかったが、一方で遅筋で観察される収縮弛緩時間の延長が改善する傾向が観察された。これは、トレッドミル運動と異なり水泳運動では抗重力筋の活動が減るなどの運動形態が異なるものの、低負荷の有酸素運動が糖尿病に起因する遅筋で生じる筋の収縮特性の変化を抑制する可能性を示唆するものである。2020年度はトレッドミルと水泳運動の運動負荷を変更し、より高い運動強度で効果を検討する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響による大学施設の一時閉鎖によって、長期の運動療法を実施することができなかった。中止した実験の代わりに、運動ニューロンの細胞体の大きさの分布を比較したが、十分なサンプルサイズのデータを得られなかったため、運動療法の効果を判断するには至っていない。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

2020年度はトレッドミルと水泳運動の運動負荷を変更し、より高い運動強度で効果を検討する予定であった。トレッドミルは当初使用していたものが故障し、他大学のものを使用する予定であったが、新型コロナウイルスの影響で困難になった。また、本研究では長期間（12週）の継続した運動療法を実施する必要があるが、新型コロナウイルス感染症の影響により実施が困難になった。このため、高負荷運動による影響に関するデータを得ることができず、計画より遅れている。

Strategy for Future Research Activity

糖尿病に対する運動療法はその強度により効果が異なることが知られているが、運動ニューロン障害や筋タイプによるまだらな障害に対する効果は明らかになっていない。そこで、ここまでの運動様式による効果の違い関する検討に加え、運動強度の検討も重要になる。
今後の方針としては、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によりトレッドミルの使用が不透明なため、水泳運動を中心に高強度運動療法が糖尿病で生じる筋の収縮特性の変化、運動ニューロン障害に与える効果を検討し、低負荷運動との比較を行う。また、トレッドミルが使用できない場合は、クライミング運動など、現状の設備で実施可能な他の運動様式を使用しレジスタンス運動の実施を検討している。

Causes of Carryover

本研究は長期の飼育期間を要するが、新型コロナウイルス感染症の影響による大学施設の一時閉鎖によって、長期の運動療法を実施することができなかった。そのため実験が一時ストップし、次年度使用額が多く発生した。
2021年度は2020年度に予定していた、トレッドミルと水泳運動の高強度運動で効果を検討する。そのため、ラットと飼育用品（餌、床敷）、麻酔薬、運動ニューロンの解析に必要なトレーサーなのを購入する。