2018 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ傷害における遺伝的背景の解明ー性ホルモン関連遺伝子群に着目した検討ー
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18K17863
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
熊谷 仁 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 学振特別研究員(PD) (00794819)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エストロゲン / 遺伝子多型 / エストロゲン受容体 / アロマターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の検討では、トップレベルの日本人アスリート1311名を対象として、ケガの既往歴と遺伝子多型解析のための唾液サンプルの採取を行った。ケガの既往歴については先行研究をもとに作成したアンケートを用いて実施し、遺伝子多型についてはTaqMan法を用いてESR1(rs2234693およびrs9340799)を解析した。その結果、ESR1 rs2234693のCアレルを有するアスリートにおいて、過去の筋損傷の受傷率が有意に低く、競技種目や競技歴で補正後も有意な関連が認められた。また、これらの関連は、男女別に検討を行った場合にも同様の結果が得られた。次に、エストロゲン受容体αが筋のケガの受傷に関連する機序を調査するために、若年者261名を対象として筋損傷のリスクファクターである筋スティフネスとESR1 rs2234693の関連を検討した。その結果、ESR1 rs2234693のCアレルを有する対象者において、筋スティフネスが有意に低く筋損傷のリスクが低いことが明らかにされた。 女性ホルモンであるエストロゲンは、運動によって引き起こされる筋損傷(muscle damage)に保護的に作用することが示唆されている。そこでエストロゲンの作用に関連するESR1 rs2234693およびCYP19A1 rs936306と長時間運動による筋損傷マーカーの変動について検討を行った。その結果、CYP19A1のTアレルを有する者において筋損傷マーカーの変動が有意に小さいことが明らかにされた。また、ESR1 rs2234693のCアレルを有する者において筋損傷マーカーの変動が小さい傾向が認められた。これらの検討結果から、エストロゲンの作用に関連する遺伝子多型は一過性の長時間運動による筋損傷マーカーの変動に関連する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、性ホルモン、特にエストロゲンの働きに関連するエストロゲン受容体の遺伝子多型と筋損傷の関係について検討を実施し、エストロゲン受容体の遺伝子多型が筋損傷の受傷歴に関連することを明らかにした。また、長時間運動による筋損傷(muscle damage)とエストロゲン受容体およびアロマターゼの遺伝子多型の関連も明らかにしており、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究では、本年度の研究で着目した筋に関するケガだけでなく、骨や靭帯に関連するケガについても検討を実施する予定である。また、本年度の研究は横断的な調査であったが、次年度以降はアスリートを対象とした追跡研究を実施し、遺伝子多型とケガの発症の関連についても検討を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度実施予定であった研究を十分に遂行できたため、直接経費の一部を次年度に繰り越した。 翌年度の研究において、繰り越した直接経費および予定されている直接経費を用いて実験や学会発表などを実施する予定である。
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