2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K17869
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山本 悦史 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (30757670)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロスポーツ / スポーツイノベーション / ビジネス化 / ローカル化 / ジレンマ / 組織構造 / 生産性 / 価値基準 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プロスポーツクラブ・球団の能力形成とイノベーション・パターンの関係性を解明すること、そしてこれらの作業を通じて、組織能力に応じたプロスポーツの事業創造モデルを提案することにある。2018年度は、本研究の第一段階に位置づけられており、特にJリーグ加盟クラブ(以下「Jクラブ」とする)を事例としながら、各クラブの組織能力とこれらが展開するイノベーションの特徴(イノベーション・パターン)の関係性を分析するための仮説モデルを構築することが目指された。 各クラブの関係者またはその他のステークホルダーに対する半構造化インタビューおよび参与観察、さらには公式文書や公開資料等のドキュメント分析を実施した結果、個々のクラブが地域に暮らす人々の多様なスポーツニーズに対応することが困難になってしまうのは、単に資金不足や人材不足といった要因だけが理由ではなく、目の前の顧客(サポーターやスポンサー企業など)の声に積極的に耳を傾け、彼ら/彼女らの欲求(ニーズ)に忠実に対応しながら、自分たちの製品や組織、業務のプロセスを「合理的に、正しく」つくり上げていった結果によっても生じる可能性があることがより明確になった。これらは自組織の能力を高めていった結果、イノベーションのパターンが限定されてしまう可能性を示唆していると言ってもよい。 自らの収入を増すことに成功し、より多くの社員やスタッフを採用し、地域の様々なサポートを獲得できるまでに成長したクラブであっても、時間が経過するにつれてその成長が頭打ちになったり、地域に暮らす人々の欲求(ニーズ)に柔軟に対応することが難しくなってしまうという現象が生じることがある。本研究で得られた知見が精緻化・理論化されていくことで、プロスポーツ経営の過程でこうした現象が生じるメカニズムを「組織能力」といった観点から説明していく際の一助になっていくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を広く社会に公表していくという点で課題は残されたものの、当初予定していた対象クラブへの調査実施は概ね計画通りに実施することができた。また、研究協力者との関係構築およびネットワークの拡大という点においても一定の成果を得られたことから、次年度以降の研究をさらに発展させていく上での素地を築くことができたと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、前年度に課題となった研究成果の公表という側面にも積極的に取り組みつつ、これまでの調査・分析の過程で浮き彫りになった知見をより深めていくことを目指す。具体的には、前年度から実施している調査(クラブ関係者等へのインタビュー調査および参与観察)をさらに広い範囲で実施しながら、そこから浮かび上がるクラブの組織能力とイノベーション・パターンの関係性を分析するための仮説モデルをさらに精緻化していくといった作業を試みる。最終年度には、これらの仮説モデルの検証およびこれらの知見を踏まえた実践的示唆の提示を目標としていることから、2019年度におけるこれらの作業は、そこへ向かうための準備段階に位置づけられる。
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