2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18084
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邉 拓貴 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (50808433)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ウェアラブルコンピューティング / 超音波 / ヒアラブル / 状況認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,耳から取得する外界音の周波数を自在に変化させることによってユーザの聴力を拡張/制限する,聴力自在化技術の確立を目的とする.ユーザがマイク付きのイヤホン型デバイスを常時装着する環境を想定する.マイクで取得した外界音に周波数を変化させる処理を加え,ユーザの外耳道に発信することで,ユーザが実際に取得する音を要求に応じて自在に変化できる.聴力自在化により,例えば,超音波の可聴化による通常ヒトには知覚できない音を利用した状況認識,周波数の部分拡大によるユーザの周波数分解能の向上等が可能になる.提案手法により,従来のヒトの能力では困難であった聴力の制御を可能にすることを目的とする.本年度は,聴力自在化技術のための周波数リアルタイム変換手法の実装について取り組んだ. 具体的には,聴力自在化技術をウェアラブルデバイス上で実現するためのハードウェアの実装と,周波数をリアルタイムに変換するためのソフトウェアの実装を行なった.ハードウェアの実装では,タブレット端末,オーディオインタフェース, マイク,イヤホンを用いることによって,持ち運び可能なウェアラブル環境での実装を実現させた.さらに,特定の周波数までの利用であれば,スマートフォンとマイク,イヤホンのみの実装で実現できることを明らかにした.また,ソフトウェアの実装では,Androidアプリケーション上で周波数をリアルタイムに変換するアプリケーションを実装した.ユーザは周波数の変換手法をラジオボタンで,その変換手法を適用する範囲をシークバーで自由自在に設定することが可能であり,聴力自在化技術実現のための環境を整えた.これらの実装は,今後聴力自在化の研究を進めていくにあたり基盤となる部分であり,重要な位置付けと考える.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように,本年度は提案手法の実装を主に行い,概ね当初の予定通りの進捗であるといえる.本年度に行った内容によって,今後の聴力自在化技術の研究を進める上での基盤が出来上がったと考える.本サブテーマを取りまとめたものを,2018年12月に行われたユビキタスウェアラブルワークショップ2018 (UWW 2018)において口頭発表を行った.また上記内容に加え,提案手法によって音源位置が特定できるかといった基礎的実験や,提案手法を用いた想定アプリケーションの実装及び実験の内容を加えて発展させたものを,ウェアラブルコンピューティングの分野最大の国際会議である,23rd International Symposium on Wearable computers (ISWC 2019)に投稿予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は実装した環境を利用し,基礎調査と想定アプリケーションの実装及び評価を行う.具体的には,提案手法では外界音を編集してユーザに聞かせるが,編集後の音を聞いて元の音源の位置が把握できるのかを明らかにする.その後,聴力自在化によってもたらすことができるアプリケーションの実装及び評価を行う.アプリケーションの例として,1. 電気自動車/ハイブリッド車の検出,2. 打音検査,漏水検出への応用,3. 超音波によるヒューマンエコーロケーションなどを想定している. 1. 電気自動車/ハイブリッド車の検出:電気自動車/ハイブリッド車は走行時の音が非常に静音であるが,そのために歩行者が接近に気付かず事故に繋がる危険性が指摘されている.一方,これらは走行時に非可聴域の音を発信していることが知られている.提案手法を用いれば,非可聴域の音を可聴化することにより,電気自動車/ハイブリッド車の接近を検知し危険を回避することが可能になる. 2. 打音検査,漏水検出への応用:打音検査や漏水検出では,正常な場合と異常な場合の音の違いによって対象の状態を判別する手法が取られている.しかし,この手法は作業者の経験と技術が必要である.提案手法により周波数の一部分を拡大すれば,初心者でも細かな音の違いに気づき,これらの検出のサポートができる可能性がある. 3. 超音波によるヒューマンエコーロケーション:エコーロケーションとは,コウモリやイルカが用いる音響位置認識技術である.視覚障害者の方の中には可聴音でエコーロケーションを行う方もいるが,超音波を用いる方が環境音に邪魔されない,短い波長なので対象物による反響の違いが顕著であるという利点がある.提案手法により超音波のヒューマンエコーロケーションの可能性を調査する.
|
Causes of Carryover |
プロトタイプ実装のためのデバイス購入に利用する予定であったが,残金では足りず利用しなかったため,当該助成金が生じた.翌年度の助成金と合わせて必要なデバイスを購入する予定である.
|