2019 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における公害反対・環境保全運動全国マップの作成と発展的継承
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18K18236
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
友澤 悠季 (西悠季) 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (50723681)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公害 / 環境保全 / 社会運動 / 住民運動 / 運動史 / ネットワーク / 経験の継承 / アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1950~80年代における全国の多様な公害反対運動・環境保全活動の実態を把握し、地域の固有性の中で市民・住民が公害予防・環境保全に果たしてきた役割を解明するための基礎資料を作成することを目的とする。方法は資料分析とフィールドワークである。 本年度は、引き続き環境保全協会編『公害年鑑』の各号に掲載されている団体名簿からの全国公害反対・環境保全グループリスト作成を行った。1975年時点での日本国内の運動団体数をみると、全国47都道府県のうち46都道府県になんらかの運動グループが見られた。団体の数はおおむね人口密度と相関しているが、工業地帯との近接も関与していた。活動目的は、環境汚染への抵抗が最も多く、次いで自然保護、開発反対、原発反対が多いが、医療問題や薬害・食品公害、障害者福祉に関するグループも複数存在する。これらの成果について国際学会での報告を行い、海外の状況との差異に関する知見を得た。 昨年からの課題である、団体名簿では不足する情報の裏づけと取材の蓄積について、主として、運動のキーパーソンの一人であった宇井純(1932-2006)旧蔵資料調査と関係者への聞き取りを進めるとともに、追加資料の発見などがあった。また、労働組合運動と地域運動の接点についても、社会党、共産党などの政党の公害への取り組みに関する資料を分析対象として追加し、関係性の読解を開始した。 これまでで収集したグループ名は最大1,267団体にのぼるが、内訳をみると、構成員が重なっていたり、1~2年での活動停止も見られるなど、濃淡がある。研究の進捗につれ、この濃淡を無視して、すべての団体を「地図化」=平面にまとめて表現してしまってよいか、なお検討すべき点が多いことが分かってきた。最終年度における課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の入力・分析に関してはすべて完了することはできなかったが、必要な見通しは立てられた。研究の進捗により当初想定していなかった新たな課題も見つかり、長期的な研究展望も刷新された。年度末の社会情勢の変化により出張を伴うインタビュー調査が不可能になった点は検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、グループリストの表現形態について適切かつ魅力的な在り方を検討する。今回のリストでは捕捉できなかったグループが多数あることを念頭に、今後も更新可能なものとして提示しなくてはならない。可能な限り、各グループが生まれた地域の特性・固有性、グループ間の相互交流、交流をつなぐキーパーソンの存在を表現の中に位置づける必要がある。公害経験の継承を考えている関係者にも助言を得つつ、可能な限り関係者への取材をすすめ、研究期間終了後の発展的研究についての展望を見出したい。
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