2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18247
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
友松 夕香 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD) (70814250)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アフリカ / 農業 / 近代化 / 農業普及員 / 開発コンサルタント / ローカルヒストリー / グローバルヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、すでに入手済みの資料をもとに執筆を開始した。4月は、訪問研究員として滞在していたプリンストン大学のアフリカ史ワークショップで論文の発表をおこなった。また、論文を一点、学術雑誌に投稿した。
2~3月は、ガーナ北部のノーザン州で現地調査をおこなった。主な調査内容はオーラルヒストリーの収集である。調査対象は、1960年代から2003年代まで食料・農業省に所属し、農業普及員として農業の生産性を高める目的で実施された事業に携わってきたA氏である。また、A氏は1990年代より地元の公立高校のPTA会長を務めており、食料・農業省からの退職後は、郡の教育委員会と女性の教育を推進するNGOの理事として教育行政にもかかわってきた。インタビューでは、こうした職務関係の過去はもちろん、生い立ち、家族、恋愛、友人関係、宗教的実践を含め、自由に語っていただいた。これらの内容を総合的に取りまとめることで、農業/環境史を社会史との交錯点で描く予定である。
調査では、オーラルヒストリーに加え、A氏が所蔵する文献を整理し、必要なものを複写した。その多くは行政・プロジェクト文書である。A氏はまた、ドイツ、デンマーク、フランス、米国、韓国、日本など、様々な国の政府やNGOから派遣された開発コンサルタント、研究者、ボランティアスタッフと一緒に働いたため、彼らとの個人的な写真や手紙も多くあり、これらも許可を得て複写した。A氏が仕事を通じて、ギニア、ブルキナファソ、デンマーク、南アフリカを訪問した際の資料も収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、予定どおりガーナ北部で現地調査を実施することができた。ただ、諸般の事情から出発の時期が2月まで押し、帰国日も新型コロナウィルスの拡大の影響で当初の予定より5日早く切り上げることになった。このため、ガーナ大学の研究者との打ち合わせとガーナ南部の農村部への視察的訪問を行うことができなかったが、調査村に25日間滞在し、オーラルヒストリーと文献の収集を計画どおり完了させることができたことは幸運だった。
調査中は、アフリカ・中東の政府と航空会社のコロナウィルス対策をニュースで追っており、帰国の時期を早める必要性を検討していた。しかし、エミレーツ航空がガーナ・ドバイ間の便を3日後からキャンセルすることを発表したときは、あまりに急で驚いた。ガーナの首都で旅行業を営む日本人の方がエミレーツ航空から一報を受けた直後に電話で知らせてくださったことで、まだ首都から遠い村にいたにもかかわらず、エミレーツの最終便に乗ることができた。現地に根ざして事業をする日本の方々からの情報提供・ご支援のありがたさと、現地での広いネットワークの構築の重要性をあらためて実感することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度(2019年度)に収集した大量の文献・写真を整理することから始める。次に、オーラルヒストリーと文書の解析を進める。6月に研究会で論文の発表を予定しており、考察を深めたい。これまでのデータをもとに執筆を進めることで、最終年度(2021年度)に向け、研究の取りまとめを開始したい。投稿論文と図書による成果発表につなげるつもりである。
8月に2回目の現地調査を計画中だが、渡航ができなければ3月に延期する予定である。新型コロナウィルスの関係で状況はまだ読めないが、いつでも行けるように準備を整えておく。
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