2018 Fiscal Year Research-status Report
Gender and Structural Violence in U.S. Relocation Camps: Okinawa and Canada in Comparative Perspective
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18K18300
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
洪 ユンシン 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80751057)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 収容所 / 沖縄戦 / 慰安所 / カナダ / 占領 / 占領 / ジェンダー / 構造的な暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はナショナリズムとジェンダーに対する問題意識から沖縄戦における「慰安所」を主な研究テーマとしてきた。なぜなら、国際関係論から沖縄の戦後史にアプローチすると、「慰安婦」問題は、「慰安婦」ではなく「慰安所」という空間に焦点を合わせたジェンダー中心の視点からとらえられるのではないかと考えたからである。本研究の目的は、「慰安所」から「収容所」へとその問題認識を広げること、つまり、沖縄戦における米軍収容所体験の意味をジェンダー視点で追究することによって、戦中と戦後の軍事暴力の連鎖を実証的に検証することである。また、沖縄人の収容所体験を実証的に分析しつつ、これまでの沖縄戦研究であまり注目されなかった収容所における女性の体験の重要性を、カナダの事例と比較しながらグローバルに意味づけることも目的としている。 本年度は、収容所に関する先行研究を分析しつつ、一次資料分析のために沖縄県内市町村との協力体制を固めた。沖縄において「収容所」問題にもっとも力を入れてきたのは名護市である。沖縄の「収容所」に特化したデータ調査を行った名護市史編纂委員会の基本データに関する使用許可を得、「収容所」体験の中の女性体験についてのデータ分析を行っている。またカナダUBC大学(研究協力者Nam-lin,Hur教授)のアジアセンターで、「慰安所」から「収容所」までの女性体験について研究発表を行った。韓国においても、日本軍の「慰安所」のみならず米軍「収容所」を経験した沖縄の特殊な状況についての研究発表や公開講演を行った。こうした研究を通して、「慰安婦」制度から戦後の米軍によるRAA(特殊慰安施設協会)制度に至る過程、つまり構造的な暴力としての「占領」と「性」の問題を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次資料を女性の体験中心に分類し、データベース化を順調に進めている。米軍政については既存の研究成果を踏まえて、沖縄諮詢会の会議録と沖縄県公文書館所蔵資料の「軍占領一般文書」の中の「性」政策関連を照らし合わせながら分析している。それによって、収容所内の女性証言を体系的にまとめることを目的とする。今までの沖縄戦研究においてジェンダー視点による沖縄の収容所の女性体験分析は十分に行われてこなかった。そのためこの段階で行うデータベース化作業及び一次資料の分析が必要と考えて調査を続けている。 現在、収容所という存在が、「国民」というカテゴリーの中でどのように語られてきたのかという言説的側面と、収容所制度が、占領直後の空間変容にどのような政治的制度的影響を与えたかのか、という、2つの側面から研究を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
沖縄で、「収容所」関連証言を集めている資料としては、『読谷村史』が代表的である。他の地域は市町村史の中に散在しているため調査に時間を要する。証言のデータベース化に当たっては、名護市のデータ利用許可を得ているが、他にも、沖縄県平和推進部の協力のもとでデータの分析を進める予定である。原則として証言者の実名は伏せるなど、個人情報保護には十分な注意を払いながらの研究を推進する。 沖縄に対する「外」からの視線を取り入れるために、海外の先行研究を調査・分析する。具体的には、収容所という空間分析を多角化するための比較対象として、沖縄と類似した収容所の形を体験しながらも、異なる動きを見せる収容所体験、そしてアジアとの連帯まで広がる日系カナダ人についての観点を研究の視野に入れたいと考えている。 そのため、カナダにおける現地調査を行い、海外での先行研究を取り入れながら、沖縄戦における「収容所」研究の重要性について考察したい。
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Causes of Carryover |
科研費の交付が決まった時点でカナダにいたため、国内現地調査のために申請した主張や調査費が余った。次年度には、沖縄を中心とした現地調査費用として使う予定である。
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Research Products
(7 results)