2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K18489
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
中生 勝美 桜美林大学, 人文学系, 教授 (00222159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都馬 バイカル 桜美林大学, 人文学系, 准教授 (00434457)
徐 亦猛 福岡女学院大学, 国際キャリア学部, 准教授 (00638265)
長谷川・間瀬 恵美 桜美林大学, 人文学系, 准教授 (90614115)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 海外の宣教支援 / 香港の神学院 / 宗教規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画を立てた時から、現在の中国政権の宗教政策が一層規制を厳しくしていることは、研究を実施してきた過程で具体的に明らかになっている。1990年代以降に、急速に中国国内で増加したクリスチャンの信者数は、最近の宗教政策によって減少したわけではなく、今回の宗教研究者、キリスト者へのインタビューからも、「嵐の過ぎ去るのを待っている」」状態であることが判明した。それでも、表面に出ることを控えながら、海外からの中国国内の宣教支援と信徒への地道な援助をしていることが、初年度の研究から明らかになった。 研究の実績として、台湾・香港・中国内モンゴル自治区で実地調査、および公開資料の文献調査をおこなった。中国国内で、2000年代になってしばらく宗教の規制が緩和されて、キリスト教研究が盛んになった時期の調査研究をもとに、地域ごとの詳細なキリスト教関係の研究書が公開出版されており、今回の調査で多くの資料を収集することができた。また台湾では、戦前から戦後にかけての宣教活動をまとめた資料が、特にカトリックを中心に書籍にまとめてあるが、日本ではこれらの資料を総合的に紹介している研究はない。今後の研究の基礎となる資料を集められたのは大きな成果であった。 台湾・香港にて、中国国内のクリスチャンの状況を、宣教支援をしている教会、キリスト教関係の研究所、大学付属の図書館で調査をすることができた。とくに、香港の図書館では、中国国内で発表された修士論文、博士論文を収集している図書館が複数あり、これを分担して調査すれば、公開資料と合わせてかなり現状を解明することが可能であることが判明したので、これを次年度の研究課題としたい。 ただ、韓国への調査は、かなり政治的に厳しい問題を含んでいるため、今年度の調査については中止して、今後、どのように調査を進めるかを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に従い、台湾・香港・中国内モンゴル自治区で実地調査を行った。台湾には2018年10月25日~30日まで中生が出張し、中国大陸での宣教状況の歴史に関する資料を収集した。香港には中生と徐が2019年2月9日~14日まで出張し、漢語基督教文化研究所と建道神学院で中国の信徒に対する家庭教会の教育について調査、およびそこで出版したものを入手した。徐亦猛は2019年3月7日~11日に台湾へ出張し、東アジアキリスト教交流史研究会と台南神学院主催の国際シンポジウムに参加し、参加者との中国国内の宣教状況に関する意見交換をしたうえで、図書館資料を調査した。また中国内蒙古自治区にはバイカルが2019年2月21日から3月1日まで出張し、戦前に地元で宣教活動をしていたスウェーデンの宣教師が残していた写真について調査した。 韓国については、つぎの要因で出張を見合わせている。中生が台湾での中国大陸布教の状況を聞き取ったときに、中国布教は韓国の教会が積極的に展開していることを聞いた。特に済州島は、中国からの観光客を誘致するため、ビザ要件を緩和して大量に中国からの旅行者が増加したので、それに便乗して、中国の家庭教会の信者が、済州島にて研修を受けるシステムができあがっていた。しかしこの活動の支援に中国からアメリカに亡命した牧師が中心となって組織された団体がかかわっていたので、中国側から済州島の渡航を自粛するような動きがあったという話も聞いた。 そこで、現時点で中国政府が内政干渉として厳しい態度で臨んでいる韓国から中国への宣教支援の活動を調査することは、今後、この研究が原因となって、研究分担者も含めて中国での研究や交流が難しくなることも考えられたので、とりあえず今年度は韓国の出張を見合わせることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2000年代になって、中国で宗教の規制が緩和されたことにより、キリスト教の信者が増加し、キリスト教の研究が盛んになった時期がある。この時期の調査をもとに、中国では地域ごとで詳細なキリスト教関係の調査報告書が公開出版されており、今回の調査で多くの資料を収集することができた。そこで、今後は公開資料の整理をすることが、当面の作業として必要である。 さらに、今回の香港調査を通じて、香港のバプティストカレッジにあるキリスト教文化研究所は、中国大陸の各大学、研究所に提出された修士論文、博士論文を精力的に収集しており、このコレクションは、現在の中国大陸のキリスト教を理解するうえで非常に有益だという情報を得ることができた。さらに香港中文大学の崇基書院は、本来キリスト教に基づく高等教育を中国語で行うことを目的として1951年、香港キリスト教教会によって設立されたので、その図書館も、バプティストカレッジと同様に、中国大陸を中心とする中国語の修士論文、博士論文を収集していることが判明し、今年の調査で一部を閲覧することができた。 台湾については、1950年以前に中国布教をしていた宣教師のネットワークが、戦後の台湾にも存続しており、その関係をたどった宣教関係の文献資料があるので、その方面の調査と、かつて中国布教を経験したことのある宣教師が存命なので、そのインタビューを計画したい。 韓国の宣教活動に関しては、情報を収集して、政治的な問題に触れない角度で調査をしたいと考えている。例えば中国へ布教して帰ってきた宣教師へのインタビュー、および中国へ宣教師を送っている教団へのアクセスなども考えられるが、これも慎重にならざるを得ないので、情勢を勘案して実施するかどうかを判断したい。
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Causes of Carryover |
初年度は、研究計画をしていた台湾・香港・中国内モンゴル自治区の調査を実施することができたが、韓国の調査に関しては、上記の政治的な問題のために、いったん調査を見合わせたため、初年度の出張経費が未使用となり、次年度に回すことにした。 第2年での韓国での調査は、現在情報収集中であるが、香港での中国国内の宣教状況について、詳細な文献資料の蒐集をしている香港のバプティストカレッジにあるキリスト教文化研究所と香港中文大学の崇基書院図書館にあることが判明したので、そちらに重点を置くほうが、具体的な研究成果があがるのではないかと考え、研究分担者とも相談をして、今後の方針を立て直したいと思う。
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Research Products
(4 results)