2019 Fiscal Year Research-status Report
Assessing the storm-water management function of traditional Japanese dry-garden styles and designing raingardens in the city
Project/Area Number |
18K18493
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
山下 三平 九州産業大学, 建築都市工学部, 教授 (50230420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 英之 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 准教授 (10737612)
深町 加津枝 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (20353831)
森本 幸裕 京都大学, 地球環境学堂, 名誉教授 (40141501)
阿野 晃秀 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 嘱託講師 (70817642)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | グリーンインフラ / 枯山水庭園 / 雨水流出抑制 / デザイン / 雨庭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は伝統的な枯山水庭園を対象とし、その雨水管理に関する形態と機能を実測し、その評価に基づいて、現代の都市グリーンインフラのひとつとしての、雨庭のデザインに関する知見を得ることを目的とする。 これまでに京都市の相国寺、眞如寺、および太宰府市の光明寺の枯山水庭園に雨量計、水位計、水位観測用タイムラプスカメラを設置し、梅雨と秋雨の時期を含む経時的な雨水の挙動を観測した。また、それぞれの庭園と周辺地域についてドローンカメラ、ジンバルカメラ等を用いて地形の実測を行い、詳細な3次元モデルを作成し、庭園の構成・形態と雨水管理機能との関係を検討した。 相国寺は前年度の調査結果を踏まえながら、とくに浸透機能に関する推定の精度の向上を図った。眞如寺については、敷地・境内の貯留・排水路のネットワークを2種類に分類し、それぞれの機能の相違を明らかにした。またネットワークの働きにより、降雨の到達に遅れが発生することを明らかにし、敷地の雨水流出抑制効果を示した。さらにネットワークの各セグメントの浸透機能を定量化し、降雨強度・継続時間との関係を検討した。 光明寺では上記に加えて枯山水の表層材の厚さと空隙率を測定し、表層の雨水一次貯留量を推定した。また、降雨と流出のピークの遅れを確認した。 以上と並行して、福岡県粕屋郡新宮町のT社事務所敷地を対象として、都市グリーンインフラとしての雨庭のデザインを検討するために、敷地内の雨庭デザインを、地域の自然特性と上記の枯山水の検討に基づく知見を取り入れて、実施設計の段階まで進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
眞如寺における雨水挙動観測と地形測量により、敷地の雨水流出抑制機能を把握することができた。敷地内のスウェール(くぼ地)においては、鉛直方向だけでなく側面への浸透により、雨量が比較的多い時の雨水処理能力があることが確認された。この点は、相国寺の場合、長さ30m、深さ2m、幅2m程度の枯流れ(スウェール)あるため、大きな効果があることが推定された。 眞如寺の敷地・境内は西側が現代的な排水機能を比較的積極的に導入している一方、東側は伝統的な分散・浸透的な設えに特徴があることが分かった。この違いにより、東側の雨水抑制機能がより高いことが確認された。 光明寺は昭和32年に重森三玲により庭園が造られた(それ以前の形態は不明)。このときに枯山水の下に、雑草管理のためにコンクリート床板が導入された。これにより、庭園の浸透機能は限定的となった。しかしながら、表層材の空隙率は40%以上であり、排水ネットワークは複雑で、加えて、裏山からの流入を制御する空間構成になっている。こうした複合的な雨水管理システムにより、雨水流出抑制機能が、確保されていることが推定された。 以上の知見を踏まえながら、T社敷地の雨庭デザインを行った。植生の選定において、地域植栽を極力導入しつつ、四季の変化を楽しめる種類に配慮した。また雨水挙動観測のための雨量計記録を継続し、今後導入予定の浸透・流出量観測のためのシステムの設計を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
眞如寺、光明禅寺、相国寺で得られた雨水管理に関するデータの解析を進める。とくに雨量強度・継続時間と雨水浸透量・遅れ時間との関係、各敷地・境内における雨水貯留・浸透要素の個別機能と相互関係の究明、植生・地質の役割を明確にする。また、雨量と敷地測量の3次元データを用いて、敷地からの流出解析を行い、実測結果と比較する。 また、他の京都の代表的な伝統的雨庭の形態を、上記3寺の形態と機能に関する知見に基づいて分類し、既往の水害記録を参照しながら、それぞれの庭園の雨水流出抑制の、減災効果について評価する。 一方、T社敷地の雨庭の施工を実施し、その雨水管理機能の観測と結果の評価を行う。
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Causes of Carryover |
年度末に実施する予定であった研究打ち合わせ会議と現地視察が、新型コロナウィルス感染症拡大により中止となったため、次年度に状況を慎重に検討しつつ、改めて実施するため。
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Research Products
(11 results)