2020 Fiscal Year Research-status Report
A Comprehensive Survey of the Post-Disaster Society
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18K18547
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
竹沢 尚一郎 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (10183063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 義浩 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 講師 (50571808)
黒崎 浩行 國學院大學, 神道文化学部, 教授 (70296789)
伊東 未来 西南学院大学, 国際文化学部, 準教授 (70728170)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 災害人類学 / 避難行動 / 原発事故 / 被傷性 / 地域社会 / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは「被災後社会の研究」である。その目的は、地震や津波、大事故などの大災害に見舞われた社会が、その被害を可能なかぎり軽減するにはどのように行動すべきかを、文化人類学や地域社会学、宗教学、建築学などの学際的な視点から明らかにすることである。 災害は当該地域に住む住民全体に甚大な被害をおよぼすが、その全成員に対して等しく作用するわけではない。ジェンダー、職業、所得、年齢等の要因に応じて、不平等な仕方で生じるものである。そのため、そうした不平等が生じた理由を探ると同時に、そうした状況を補正していくこと、どのような支援が必要かつ効果的なのかを、現場でのフィールドワークにもとづきながら明らかにしていくことが求められる。 本年度は、東日本大震災が引き起こした東京電力福島第一原子力発電所の重大事故の後で、京都府及びその近郊に避難した避難者を対象に、事故直後の状況、避難を決意した理由、避難生活の中の困難、家族の状況等についてインタビューを実施し、それを文字化することに尽力した。インタビューした人数は延べ25人、対象者は京都府及び近県に避難した避難者と、一時避難した後に福島県に戻った人びとである。 このインタビューについてはすべて文字起こしをした後、当人にチェックしてもらっている。本研究では過去に、避難者を対象にしたアンケート調査を実施することで、避難行動と避難生活についての全体的傾向を明らかにしたが、今年度に多くの人びとのインタビューを実施することで、個々のケースについても深い理解を得ることができた。 現在、過去に実施したアンケートと今年度のインタビュー、および翌年度に実施するインタビューを総合して、本として出版するべく準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に、避難者4,50名に対してインタビュ-を実施し、各個人の避難行動と避難生活について情報を取得すると同時に、すべてのデータを整理して記録化し、出版社との協議にまでもっていく予定であった。 ところが、今年度はコロナウィルスの蔓延によって全国で非常事態宣言が出されるなどしたため、出張をしてインタビュを実施することが一部不可能になり、当初予定していた分のうち、約6割程度しか完了していない。そのため、本の出版についても遅れが生じている。 その一方で、本研究を継続・発展させるために新たに日本学術会議に科学研究費を出願し、採択された。そのため、今後4年間にわたり、本研究をより発展させた形で研究を遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は萌芽的な性格のものであり、社会人類学と地域社会学を専攻する研究代表者のほかに、文化人類学、宗教学、建築学を専門とする研究分担者3名からなるものであった。そのため、各自が独自の視点から研究を遂行すると同時に、それを踏まえつつ将来的にどう発展させていくかを全員で討議した。 本研究を発展させるには4人の研究者では限界があるため、他分野の研究者にも呼び掛けて、被災後社会についての総体的な理解を得るための研究を新たに立案した。それによって令和元年に、日本学術振興会科学研究費助成事業基盤(A)「被災後社会の総体的研究:減災マニュアルの作成と減災科学の確立に向けた研究」(研究代表者竹沢尚一郎)を申請したが、結果は不採択であった。そのため、テーマを若干変更して、令和2年に基盤研究(B)を申請し、採択されたものである。 本研究をまとめるために、今後は被災後に原発事故避難者がどのように生きてきたか、どのような困難に直面し、どう対処してきたか、などのテーマに関して綿密なインタビューを実施し、それをまとめることで本として出版する予定である。 そうした方向性に沿って、当初考えていた学際的・総合的な研究を実現するのではなく、むしろ研究テーマを文化人類学の領域に絞り込んで、綿密なフィールドワークにもとづきながら研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
一番の理由はコロナ禍の蔓延のために、出張してインタビューを行うことが大きく制約されたことであった。インタビューを予定していた人数の約6割程度にとどまっており、令和3年度中にインタビュ-を完了する予定である。また、それを文字化するために、大学院生等に依頼して文字起こしをする予定である。 これによって原稿が完成したなら、出版社と協議して、本年度中に印刷出版する予定である。
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