2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K18848
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊田 亜紀子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20313009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 正寛 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40805769)
三宅 弘晃 東京都市大学, 工学部, 准教授 (60421864)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子絶縁材料 / 量子化学計算 / 電荷移動 / 絶縁劣化 / 材料設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は申請者がこれまで構築してきた第一原理計算を柱としたパラメータフリーな多階層モデリング法を応用することで、有機高分子材料の電気特性を評価・予測する方法を確立し、物性の詳細な理解に基づいた機能性絶縁材料開発手法を開発することである。このため本研究では、(1)高分子絶縁材料の電気特性評価に向けた多階層モデリング方法の改良、(2) 実材料を模擬した大規模計算への応用、(3)多階層電気特性の実験的評価方法を考案することを目標としている。 本年度は、(1)、(2)に関しては、有機高分子材料のなかでも主骨格の「柔らかい」、すなわち有機半導体材料で広く用いられる共役系の高分子材料とは異なった特徴を持つ、やわらかい高分子材料の非晶領域における電荷移動のシミュレーション方法を開発した。経験的なパラメータや現象論的な式を用いない方法を二通り(高分子鎖の統計的な性質を用いる方法と、ポリマーを代理する適切なオリゴマーをポリマーの電子状態に基づき決定する方法)を提案した。テストケースとしてポリエチレン中の電荷移動をシミュレートし、その電荷移動度を計算したが、どちらの方法を用いても同程度の値、さらには温度特性が算出された。加えて、これらの結果は実験値と良好に一致した。 (3)に関しては、電子線を照射することで電荷移動度を測定する装置を開発し、測定を行った結果、予想していたような信号がでることは確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は(1)高分子絶縁材料の電気特性評価に向けた多階層モデリング方法の改良、(2) 実材料を模擬した大規模計算への応用、(3)多階層電気特性の実験的評価方法の考案、よりなる。 当初の研究実施計画では本年度においては、(1)を中心的に行うとともに(3)にも着手することとなっていた。 (1)に関しては高分子材料中の電荷移動度を計算できるようなモデル化方法を提案した[1]という点で目標は十分達成されたと言えよう。また、分子量の大きい高分子材料のモデル化を行う方法を開発したという点で(2)の一部も達成されたと考えられる。(3)に関しては絶縁材料における階層的な移動度の測定方法の開発をすすめてきている。まず、「遅い」移動度の測定方法を提案し、測定装置(電流・Pulsed Electro Acoustic同時測定装置)の開発に成功した。加え、「速い」移動度の測定方法(電子線照射time of flight法)も開発中ですでに信号が得られることを確認している。 以上から、本研究は概ね順調に進展していると言えよう。 [1] M. Sato, A. Kumada, and K. Hidaka: Multiscale modeling of charge transfer in polymers with flexible backbones, Phys. Chem. Chem. Phys., 21, 1812, (2019).
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画と大きな違いは無いが以下の通りである。 高分子絶縁材料の電気特性評価に向けた多階層モデリング方法の改良(1)に関しては、本年度開発した方法を他の材料系に適用する。実材料を模擬した大規模計算への応用(2)に関してはより大規模なあるいは複雑な系をモデル化するために機械学習法を導入する方法を検討する。 多階層電気特性の実験的評価方法の開発(3)に関しては本年度開発した装置で「遅い」移動度の測定を行うとともに、「速い」移動度の測定装置を開発する。 余力があれば、計算結果と実験結果の比較を行うことで計算モデルの精緻化あるいは簡単化を図るとともに、計算によって予測されることを実験的に検証することを目指す。
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Causes of Carryover |
TOF測定装置の開発において、本年度は条件だしの段階であるため、汎用の金属メッシュを電極に用いていたが、来年度には、より測定系のS/Nを向上させるため、特注のメッシュ電極を作成する。よってこの分助成金を使用するタイミングがずれこんでいる。
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Research Products
(10 results)