2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the Cesium Adsorption Mechanism on the Metal Complex-Lipid Interface, and improvement of the function
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18K18956
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大場 正昭 九州大学, 理学研究院, 教授 (00284480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 真司 九州大学, アイソトープ総合センター(箱崎地区), 准教授 (10253402)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | セシウム吸着 / 金属錯体 / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属錯体粒子と脂質界面を利用した新しいセシウム吸着剤の創出を目指して、(1) 金属錯体粒子-脂質界面構造ならびに界面へのセシウムイオン吸着機構の解明と高い吸着能実現に向けた系の最適化を推進し、(2) 脂質二分子膜と金属錯体ナノ粒子複合体へと展開する。 リポソームにイオンチャネル形成物質であるアンフォテリシンB (AmB) を加え、内水相においてプルシアンブルー (PB)を直接合成することで、PB-リポソーム複合体 (PB@Lipo) の合成に成功した。PB は安価なセシウム吸着材として注目されており、そのセシウム吸着能の向上を目指したナノ粒子化が研究されているが、溶液中でコロイドを形成して吸着能が低下する問題がある。本手法で得られた PB@Lipo では、リポソームが PB の凝集を阻害するために、高いセシウム吸着能が期待される。また、この合成手法を応用して、リポソーム内水相におけるリン酸カルシウムの合成にも成功し、この手法の有用性を実証した。さらに、AmB の添加量によりイオンチャネルの形成量を制御することで、内水相への Fe(II) イオンの流入速度を変えて、形成する PB ナノ粒子のサイズ分布を制御することにも成功した。得られた PB@Lipo を用いて、セシウム吸着能の評価を行うと、粒子サイズが大きなメゾ粒子の方が、ナノサイズのものより吸着量が多く、さらに両者ともバルクの PB 粒子よりも吸着量が多い事を確認した。また、リポソームのヘッドユニットの違いによっても吸着量が変わることが見出され、PB とリポソーム界面の吸着への関与が示唆された。リン脂質のヘッドユニットの構造と電荷により界面特性を制御することで、セシウム吸着能の向上が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的には、予定通りに PB-リポソーム複合体のセシウム吸着能の評価を進めることができた。リポソーム内水相における PB の直接合成、ならびに AmB によるイオン透過能制御の手法を確立することができ、さらにリポソーム内水相におけるリン酸カルシウムの合成にも展開することで、この手法の有用性を実証するとともに、Cs 含有微粒子の吸着への足掛かりを作ることができた。吸着能にヘッドユニットの影響が示唆されたことからは、PB 粒子とリポソームの界面のセシウム吸着への効果の解明に近づくことができた。実験の再現性の確認に少し時間を要したが、来年度には放射性セシウムの吸着へと展開できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度の結果を踏まえて、機能の向上と応用を目指した研究を展開する。 セシウム吸着能に関しては、希薄溶液や生体環境における吸着能評価を進め、放射性 137Cs の濃縮効果を評価する。吸着機構の解明に関しては、電子顕微鏡を用いたトモグラフィーと元素分布解析を中心に、粒子サイズと界面の寄与を可視化し、その効果を見定める。 合成面では、PB@Lipo の作成手法は、PB や金属錯体に限らず多様な金属錯体に適用できるため、PB 以外の金属錯体の直接合成、およびリン脂質のヘッドユニットの構造と電荷による界面特性の制御を推進する。これまでに行ったリン酸カルシウムの系のセシウム吸着への利用も検討する。 リン脂質のヘッドユニットの構造と電荷による脂質界面の化学的修飾も合わせて、高機能化を目指した化合物展開も検討する。また、より安価で多様な用途への応用展開を視野に入れて、リポソームよりも作成が簡便な脂質二分子膜や高分子膜への適用範囲の拡張を検討する。 また、実際の環境汚染物質は Cs+ ではなく放射性 Cs 含有微粒子であるので、研究結果次第では、微粒子の吸着にも展開する。この場合は、イオンチャネルのサイズなど、Cs 含有微粒子に合わせた系の最適化が必要になる。
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Causes of Carryover |
放射性セシウムの吸着実験を次年度に持ち越したこと、並びに予定していた学会参加の出張旅費を校費から支出したことにより、翌年度への繰り越し金が生じた。既に放射性セシウムの吸着実験に着手しており、国際学会も含めて積極的に成果発表する予定があるため、研究費の使用計画には特に問題はない。
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Research Products
(8 results)