2018 Fiscal Year Research-status Report
Identifying epimetabolites and its elucidations by computational mass spectrometry
Project/Area Number |
18K19155
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
津川 裕司 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (30647235)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 質量分析インフォマティクス / 質量分析 / メタボローム解析 / インフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究では,新たなバイオロジーを直接開拓できる可能性を秘めた新規代謝物の発見を飛躍的に促進させるための質量分析インフォマティクス技術を構築する.3年間の具体的目標として,(A)既知構造とリファレンススペクトルの情報を必要としない新MS/MS解釈論(FSEA)の確立,及び(B)理論マススペクトル構築による包括的な化合物同定手法の開発を掲げている.また(C)新たに同定された代謝物がどのような生物学的意義があるのかを多層オミクスを照らし合わせることで解き明かすことも目標にしている.これにおいて研究代表者は,FSEAの概念、理論、およびその応用例をNature Methods誌に報告した.また本誌において,植物のモデル生物であるシロイヌナズナ自然変異体のSNPとメタボロームデータを用いた統合解析により,環境ストレスや形質に関連する植物化合物を新たに見出した.また,新たに構築した理論マススペクトルの有用性を示すために,2015年に掲載された論文のデータを再解析することにより, 400種の代謝物構造を新たに捉えることに成功し現在投稿中である.現在研究者は,「100脂質クラス同定プロジェクト」を推進しており,これまでマウスの生体組織から101脂質クラスからなるおよそ5000種の脂質分子種構造を捉えることに成功しており,論文化を進めている.今後は,研究代表者が構築した「質量分析インフォマティクス」プラットホームを,様々な代謝関連研究に適用することで,新規代謝物の探索だけでなく,多層オミクスデータも利用した統合的な解析を行うことで,生体内の新たな代謝制御メカニズムの解明に取り組んでいく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究目標であった「FSEAの理論構築」および「理論マススペクトルの拡張」は,順調に達成していると考えられる.FSEAとは,(1)マススペクトルと代謝物構造の関係性を機械学習により見出し,(2)未知のマススペクトルから代謝物クラス情報を予測するための枠組みである.この方法論とマススペクトルの類似度に基づくネットワーク解析を駆使することで,12植物種から合計で1,133種の代謝物構造を捉えることに成功した(ただし,本手法では光学異性体や詳細な官能基の位置などは捉えることはできない).一方,FSEAの精度は未だ不十分であると言わざるを得ない.具体的には,マススペクトルから正しく代謝物クラス(フラボノイドやアミノ酸類など)を推定する精度は,およそ60%であり,新規代謝物をより幅広く捉えていくためには予測精度を更に向上させなければならない(対応策は今後の研究方針に記載). 理論マススペクトルのプロジェクトとして,研究代表者は現在,「100脂質クラス」を包括的に捉える仕組みを構築中である(たとえば,細胞膜の主要リン脂質であるフォスファチヂルコリンを1脂質クラスとして数える).研究代表者が2015年,生体内脂質分子種を包括的に捉えるための方法論をNature Methods誌に発表したが,そこで捉えることができた脂質クラスの数は24種類である.それが現在,100脂質クラス以上ものマススペクトルを統一的に捉えることができるまでになってきており,幅広い生物種においてこれまで全く知られていなかった脂質代謝物の挙動が捉えられるようになってきている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,「100脂質クラスプロジェクト」の成果を論文にまとめる.まとめていく中で,特にマウスの各臓器の脂質プロファイリング結果をデータベース化し,「データ駆動型」の作業仮説構築が可能なプラットホームの構築を目指す.また,未知のマススペクトルについてはID番号を振り「未知のマススペクトルライブラリー」を構築する.これにより,「どのような生物種で」「どのような遺伝子型で」「どのような組織で」それら未知代謝物が存在しうるかを横断的に捉えることが可能となり,マススペクトル以外の(遺伝情報や生物情報などを用いた)多様なアプローチにより,代謝物構造に迫ることが可能となる. 一方,FSEAの精度向上も目指す.具体的には,現状の方法論に加えて,「代謝物クラス特異的なフラグメントが検出されているかどうか」という情報に基づく代謝物クラスの絞り込みを行う.たとえば,硫酸基を含有する化合物からは主に,硫酸基特異的なフラグメントイオンが検出されるが,このフラグメントイオンが検出されていなければ,そもそも「硫酸基含有代謝物クラス」とは推定されないような仕組みを作る.ある程度情報が整理された後は,精度テストなどのプログラムの評価を行い,FSEA法の有用性を高めていく予定である. 最後に,研究代表者が構築した「質量分析インフォマティクス」プラットホームを,様々な代謝関連研究に適用することで,新規代謝物の探索だけでなく,多層オミクスデータも利用した統合的な解析を行うことで,生体内の新たな代謝制御メカニズムの解明に取り組んでいく予定である.
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Causes of Carryover |
当初の計画では,3年間の研究における1年目に,必要な研究環境を整えるために大きな予算枠を設けていた.しかしながら,現在まで執行した予算範囲内で行った研究が予想以上に成果を挙げたため,追加の備品を購入して研究を進めるよりも,先に論文化という形で成果をまとめる必要があった.そのため,次年度使用額として予算を使用する方が,3年間全体としての研究推進に有用であると判断し,このような状況に至っている.
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Remarks |
2012年より開始したWebサイトであり,研究者の成果物を随時アップロードして更新している.現在では,月間2000件以上のアクセスがある.
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Research Products
(5 results)