2019 Fiscal Year Research-status Report
Identifying epimetabolites and its elucidations by computational mass spectrometry
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18K19155
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
津川 裕司 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (30647235)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 質量分析インフォマティクス / メタボローム / 質量分析 / 構造推定 / LC-MS/MS / 組成式推定 / 代謝物クラス推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究では,質量分析データからメタボローム情報を包括的に抽出するための「質量分析インフォマティクス研究」を通じて,メタボローム解析におけるアノテーションパイプラインの構築および新規代謝産物の発見を目指すものである.2019年度には,主に植物が産生する特異的代謝物(二次代謝物)を包括的にアノテーションするための技術開発を行った.方法論としては,まず安定同位体炭素を含む13CO2ガスで育てた植物体と,通常条件(12CO2ガス)で育てた植物体を準備し,それぞれをLC-MS/MSに供して分析を行った.たとえばフラボノイドの一種であるkaempferolの組成式はC15H10O6であるが, 13Cで育てた植物のLC-MS/MSデータでは通常よりも15個重い位置に「重くなったkaempferol」が検出されることになる.研究者はまず,この「質量シフト」を包括的に捉え代謝物の炭素数を迅速に決定する手法開発を行った.また,本情報を用いることで,正解率99.8%の精度で組成式を推定する手法を開発した.さらにMS/MSスペクトル情報から代謝物クラス(kaempferolならflavonoid)および部分構造の推定,そしてMS/MSの類似性に基づいたネットワーク解析手法を開発した.これにより,すでに構造が決定できているMS/MSスペクトルから帰納法的に未知の代謝物構造を推定することが可能となった.以上の基盤技術を用いて,モデル植物であるシロイヌナズナを含む合計 12 植物の葉、根、果実などさまざまな部位のデータから合計1,133個の 代謝物由来イオンに対して組成式を決定した.そのうち824個については代謝物構造を割り当てることに成功し,69 個が本研究によって見いだされた新規の代謝物(エピメタボライト)であった.本研究はNature Methodsに掲載され,2019年4月号の表紙を飾った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度は筆頭著者としてNature Methods誌に,そして2019年度は筆頭著者かつ責任著者として再びNature Methods誌に本予算範囲内で掲載するに至った.このような成果が達成できたのは,自分自身の研究力だけでなく,(他の研究予算で雇われているかもしれないが)研究室内外の研究協力者と一心同体になって研究を推進できたことが大きい.
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Strategy for Future Research Activity |
研究者は現在,脂質解析(リピドミクス)に資するデータ解析手法の開発に注力している.脂質は国際脂質データベースによると40000種以上の脂質構造情報が報告されているが,通常のLC-MS/MSによる解析では一度の分析にアノテーションできる脂質構造の数は1000種以下である.次年度においては,本制約を打破し,質量分析インフォマティクスの更なる発展を通じて10000前後の分子種をアノテーションパイプラインを構築することを目指す.
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Research Products
(9 results)