2018 Fiscal Year Research-status Report
自然界におけるL-グルコシド分解酵素の探索と機能性未知L-オリゴ糖の合成
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18K19159
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
奥山 正幸 北海道大学, 農学研究院, 講師 (00344490)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | L-オリゴ糖 / 基質特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大きくふたつの研究からなる.ひとつは,1)天然からL型糖質からなるオリゴ糖を加水分解する酵素を取得すること,もうひとつは,2)既存のα-L-フコシダーゼの基質特異性を改変することでα-L-グルコシダーゼを取得し,これにより,機能未知のL型オリゴ糖を得ることにある. 1)に関しては,4-ニトロフェニルグルコシドを有機化学合成し,JAMSTECより恵与いただいた深海堆積物および土壌から,L-グルコシドを加水分解する微生物を取得する予定であったが,現時点で,それらを取得することに成功していない. 2)に関しては,Thermotoga maritima由来のα-L-フコシダーゼを用いて研究を行った.この酵素は,もともと加水分解を優位に触媒する酵素であるが,これに4か所の部位特異的変異を導入することで糖転移活性を上昇させることに成功した.一方で,この酵素にα-L-グルコシダーゼ活性の付与するには至っていない.また本研究では,α-L-フコシダーゼをα-L-ガラクトシダーゼに,α-L-ガラクトシダーゼをα-L-グルコシダーゼに改変するストラテジーを取っている.4-ニトロフェニル α-L-ガラクトシドを有機化学合成するために必要なL-ガラクトースをガラクチトールから酵素変換できるマンノース脱水素酵素に着目した.これは研究に必要なL型単糖を,この酵素を用いることで,糖アルコールから酵素合成できるのではないか,という観点からである.現在,この酵素の特異性改変を容易とするために,結晶構造解析を進めており,タンパク質結晶が得られている.またα-D-ガラクツロン酸からL-ガラクトースを化学合成する反応についても最適化することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点で,L型オリゴ糖資化菌を取得できていない点で,やや遅れていると判断する.その他に関しては,おおむね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,L型糖質からなるオリゴ糖を加水分解する酵素を微生物からスクリーニングすることを進める.微生物のスクリーニング対象を土壌だけではなく,海洋や水草根圏などに広げようと考えている. また,α-L-フコシダーゼの基質特異性を改変することでα-L-グルコシダーゼを取得する研究では,T. maritimaのα-L-フコシダーゼだけではなく,その類縁酵素についても対象とし,基質特異性の改変を進める. 現在,ゲノム配列解析の発展により,非常に多くの生物のゲノム配列が明らかとされている.これらを利用してα-L-グルコシダーゼを取得することも試みる.すなわち,α-L-フコシダーゼが含まれる酵素ファミリー,糖質加水分解酵素ファミリー29の配列を精査し,基質特異性に関わりそうな配列に変化があるものを取得し,それらの組換え酵素を解析しようと考えている. 酵素が得られたら,糖転移反応の解析,糖転移反応を優位に反応する変異酵素の取得,糖転移産物の取得を進めていこうと考えている.
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Causes of Carryover |
本研究の採用が7月で,研究開始が遅れたことに加え,前述のようにL-グルコシド分解酵素保有菌のスクリーニングが遅れが生じたことにより,その後の研究に必要な経費が未使用であることで差異がでた. 翌年度はスクリーニング作業を進めることで,酵素の精製などでこれらの経費を使用する.
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