2018 Fiscal Year Research-status Report
ブリ類の微胞子虫症ワクチンの開発に向けた免疫システムの解明
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18K19242
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
坂井 貴光 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (50416046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 純 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (10443350)
藤原 篤志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主幹研究員 (30443352)
川上 秀昌 愛媛県農林水産研究所, 水産研究センター, 係長 (30762695)
山崎 雅俊 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 任期付研究員 (60743218)
石井 佑治 愛媛県農林水産研究所, 水産研究センター, 技師 (20809040)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | べこ病 / Microsporidium seriolae / 微胞子虫 / 免疫 / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年ブリ類養殖では、Microsporidium seriolae を原因とする微胞子虫症(べこ病)による被害が甚大である。本症のワクチン開発に有用な免疫系を解明するため、この感染に対するブリ類の免疫システムについて、血液、免疫関連器官及び感染部位を対象にした細胞・タンパク質・遺伝子レベルでの包括的な解析を行う。 初年度は、解析試料とする感染魚の作出のため、自然感染試験としてべこ病発生海域にブリを2ヶ月間飼育した。主要な感染部位である筋肉への感染が定量PCR法で検出された4日後(開始から25日目)及び感染試験終了時にサンプリングを実施した。 筋肉に対する病理組織観察では、形成中のシストを多数検出し、こられシストに対する炎症が見られないことを明らかにした。血漿中の抗体量をウェスタンブロット法で測定した結果、一部の個体で特異抗体が検出されたが、その量は極めて微量であり、感染試験終了時まで顕著な増加は認められなかった。感染試験の試料の他、罹病歴が有り且つ生残したブリを収集し、同様の測定を行ったところ、これらの血漿中では顕著な抗体産生が認められた。このことからシスト形成の過程では、抗体産生に関わる宿主応答は未だ微弱であると推察された。血漿については、未感染魚とのタンパク質の比較定量解析も行った。その結果、25日目の一部の個体と感染試験終了時にサンプリングした全ての個体で22kDa及び30kDaのタンパク質が特異的に検出され、これらが感染に対して応答を示している可能性が予想された。これらのタンパク質については、LC-MS/MSによるタンパク質同定のための試料調製を行った。免疫関連器官については、脾臓等をサンプリングし、RNA-seqのライブラリーを作成した。また、次年度のワクチン試験に向け、ワクチンに供するM.seriolae の採取を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
M. seriolaeについては、本原因体の培養法及び感染試験法が確立されていないため、感染魚を作出するためには自然感染しか方法が無いのが現状である。今年度は、順調な感染を見込める感染試験の開始時期が当初の想定より遅かったため、計画の進捗にやや遅れを生じたが、当該年度内に感染魚の試料を収集することができた。得られた試料に対する各解析は着実に進められており、今後順調に成果を得られると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
病態進行中のブリと罹病から長期間生残した履歴魚の血漿では、M. seriolaeに対する抗体量に差が認められたため、本病に対する抗体の役割を調べる必要がある。そこで次年度は、履歴魚の抗血清を移入したブリ、及びワクチン接種により十分な抗体産生を誘導したブリに対する感染試験を行い、感染防御における抗体の関与を検討する。また、昨年度から行っている血漿のプロテオームや免疫関連器官に対する遺伝子発現解析を精査すると共に、ワクチン試験で得られる血漿や免疫関連器官等に対しても同様の解析を行い、これらの結果を精査し、べこ病に対する免疫システムの解明を目指す。これらの試験及び解析を効率的に進めるためには、自然感染試験を早期に行えることが重要であり、状況に応じていつでも感染試験を開始できるように供試魚の準備を行った。
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Causes of Carryover |
研究対象のM. seriolae は、その培養方法及び感染試験法が確立されていないため、解析試料として用いる感染魚の作出は、感染海域での自然感染しか方法が無い。今年度は、順調な感染を見込める感染試験の開始時期が当初の想定より遅かったため、解析試料の調製にも影響を生じ、計画していた次世代シークエンサーによる遺伝子発現解析やLC-MS/MSによるタンパク質の解析を実施できなかった。これらの解析に供する試料調製までは済んでいるが、解析自体は次年度に行うことにしたため、次年度使用額が生じた。
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