2019 Fiscal Year Research-status Report
化石燃料非依存的な新規暑熱ストレス軽減法のメカニズムの解明
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18K19271
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 康介 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00192170)
豊後 貴嗣 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (40325361)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ニワトリ / 耐暑性 / ロイシン / シトルリン / ストレス軽減 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に2つの課題について調査・解析を試みた。具体的には、ロイシンおよびシトルリンの卵内投与による影響について(1)L-leu注入がもたらす効果を遺伝子レベルで解明するために網羅的な遺伝子発現プロファイルを解析するとともに、(2)L-シトルリン経口投与後のニワトリ肝臓における代謝産物メタボローム解析を試みた。その結果、(1)L-ロイシン処理群と無処理群それぞれから雄3羽および雌3羽を用いて脳組織サンプリングを行い、遺伝子発現プロファイルの収集を行なった。得られた発現プロファイルデータに正規化など統計処理を施し、L-ロイシン処理の影響を解析したところ、L-ロイシン処理によって脳組織内の遺伝子発現が変化することが判明した。(2)メタボローム解析の結果、CE-TOFMSにおいて246の代謝産物、LC-TOFMSでは115の代謝産物に違いが認められた。とりわけ、尿素サイクルに関連するシトルリン、アルギノコハク酸およびアルギニンの濃度がL-シトルリン経口投与区において高いことが示された。さらに、GABA濃度の増加とTCA回路に関連するコハク酸やフマル酸などの増加をもたらすこと、ATP産生を増加させる傾向が認められた。 以上の結果から、(1)L-ロイシン処理によって脳組織内の遺伝子発現が変化しており、中枢性体温調節機構の改変が考えられた。しかし、遺伝子発現の変化量はわずかなものであり、今後、遺伝子機能の着目した解析が必要と考えられ、次年度解析を継続する予定である。(2)L-シトルリン投与は、短時間のうちに代謝経路に影響して直腸温の低下をもたらすことが考えられた。L-シトルリンは、エネルギー代謝(同化)経路に作用することでニワトリヒナの低体温を誘発するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シトルリンおよびロイシン投与がもたらす体温調節機構への影響について網羅的解析は概ね終了している。ここまでの結果をもとに、代謝経路などのシグナリングカスケードについて詳細な検証を行い機序解明に取り掛かる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
メチローム解析によって変化が認められた原因遺伝子locus解明、特に脂質代謝変化と耐暑性獲得の性差に注目した耐暑性獲得機構について検討を加える。また、尿素サイクルおよびTCA回路に関連するシグナリングカスケードの調査、並びに関連物質の投与実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
・次年度使用額が生じた理由:委託分析費が当初予定額よりも272円割安となったため。 ・使用計画:分注チューブの購入に充てる。
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