2018 Fiscal Year Research-status Report
高速原子間力顕微鏡と高度画像解析の融合による近原子分解能AFM画像への挑戦
Project/Area Number |
18K19287
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 幹大 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (80631027)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質 / バイオイメージング / 原子間力顕微鏡 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体分子のダイナミクスを1ナノメートル以下の空間分解能で動画撮影できる高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を、単粒子解析法やディープラーニング(深層学習)による画像解析といった計算科学と融合することにより、高速AFM画像の空間分解能をオングストロームまで向上させ、タンパク質部位の揺らぎ・構造変化を定量化できる高度画像解析システムの構築に挑む。特に、単粒子解析法を高速AFM画像に適用し、動画撮影した数千枚のAFM画像をアライメントし、加算平均することでタンパク質の構造を0.3ナノメートルの空間分解能で構造解析する。具体的には、単粒子解析ソフトRelion3.0を用い、これまでに電子顕微鏡画像で成果を上げている解析手法を網羅的に適用する。次に、高速AFM画像の高度画像処理として、ディープラーニングを用いた画像認識を用いて、今まで定性的にしか議論できなかったタンパク質部位の“揺らぎ・構造変化”を、画像類似度を指標に定量化する。これは、最初に基板に固定したタンパク質の高速AFM画像を数百分子×数千フレーム程度取得し、機械学習させる。次に、結晶構造を入力とし、AFM画像とマッチングすることで、得られたAFM画像がタンパク質のどの部位に相当するのかを画像類似度によりアサインする。初年度は、本研究で用いる高精度なGPU(NVIDIA GeForce GTX1080Ti)を3台搭載したサーバー(リアルコンピューティング RC GPU Server nami4)を導入し、Relion3.0をインストールし、CaMKIIαの高速AFM画像をとりこむ事を試みた。さらに、同サーバーにMatlabをインストールし、ディープラーニングソフトウェアを用いて高速AFM画像の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、3台のGPUを搭載したサーバーを研究室に導入し、Relion3.0とMatlabをインストールした。サーバーはLinuxベースで起動し、これまでにLinuxを扱って経験がなかったため、様々な資料を参考にして2つのソフトウェアをインストールした。また、Matlab講習会へ参加し、Matlabのソフトウェアで起動するディープラーニングについて知識を増やした。さらに、Relion3.0のチュートリアルを行う事で、操作を理解し、高速AFM画像をどのような形式で取り込めばよいかを検討した。我々の高速AFM画像は特殊なファイルで構成されているため、Relion3.0やMatlabに取り込めるファイル形式に変換するプロトコルを作製した。さらに、Matlabの画像認識ソフトをCaMKIIαの高速AFM画像に適用し、ハブドメインとキナーゼドメインを画像解析により分離できるようにした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Relion3.0を高速AFM画像に適用し、Motion-correction法により、高速AFM動画の各フレームをアライメントし、数千枚の画像を加算平均することを試みる。何枚の画像を加算平均すれば目的の空間分解能に達するかを、AFM画像のパワースペクトルをとることで評価する。次に、Matlabのディープラーニングによる画像認識をAFM画像に適用する。最初に、①目的のタンパク質をアミノシランやグルタルアルデヒドでAFM基板に固定し、数百分子×数千フレーム撮影する。この画像をリファレンスとし機械学習させ、既に解かれている結晶構造を入力とし、AFM画像とのマッチングを試みる。これまでは、得られたAFM画像が、タンパク質のどのドメインやどのループ構造を反映しているのかを結晶構造とAFM画像を見比べて判断していたが、画像類似度を指標として定量的にアサインする。次に、②AFM観察バッファーの塩濃度(KCl, NaCl)を変えることで、AFM基板へのタンパク質の吸着度を変え、タンパク質部位の揺らぎの大きさを画像類似度から定量的に解析する。固定したタンパク質のAFM画像をリファレンスとした場合、画像類似度が高い部位は、固い構造をとると判断でき、画像類似度が低い部位は、揺らぎが大きい部位と判断できる。多量体構造や、巨大複合体を形成するタンパク質の場合、得られた高速AFM画像が非常に複雑となり、分子間の協同性(ある1分子の構造変化が、近接する分子の構造変化に与える影響等)を見出すことが困難であったが、ディープラーニングによる画像類似度から、機械的・定量的に協同性の有無を見出す。さらに、これらの画像類似度を時間に対してプロットし、タンパク質部位の揺らぎ・構造変化・協同性の経時変化をグラフ化し、その時定数を求める。
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[Journal Article] Macrocyclic peptide-based inhibition and imaging of hepatocyte growth factor.2019
Author(s)
Katsuya Sakai, Toby Passioura, Hiroki Sato, Kenichiro Ito, Hiroki Furuhashi, Masataka Umitsu, Junichi Takagi, Yukinari Kato, Hidefumi Mukai, Shota Warashina, Maki Zouda, Yasuyoshi Watanabe, Seiji Yano, Mikihiro Shibata, Hiroaki Suga, and Kunio Matsumoto
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Journal Title
Nat. Chem. Biol.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
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