2018 Fiscal Year Research-status Report
クライオ電子顕微鏡を用いた心筋リモデリングの分子基盤の解明
Project/Area Number |
18K19548
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
仁田 亮 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40345038)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | クライオ電子顕微鏡 / 心筋リモデリング / 微小管 / Kinesin / MAP4 / iPS心筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小管結合タンパク質MAP4は、微小管を安定化し、また微小管同士を架橋して平行に整列させて微小管ネットワーク形成を促し、心筋細胞の形態を維持する。一方でMAP4の過剰発現は、細胞の変形や分子モーターKinesinによる物質輸送異常を惹起し心肥大や心不全の病態を生じる。MAP4はTau類縁の天然変性タンパク質に属するため構造解析は困難と考えられていたが、我々はクライオ電子顕微鏡の単粒子解析法により、一本の微小管にMAP4とKinesinを結合した複合体の高分解能立体構造解析に成功した。これによると、MAP4は微小管の長軸方向に沿って結合し、tubulin同士の縦の結合を安定化することにより微小管の脱重合を抑制していることがわかった。また、MAP4とKinesinが同時に微小管に結合すると、MAP4はKinesinを微小管上にトラップすることによりKinesinの微小管上の運動を阻害し、その結果、細胞内物質輸送を阻害することが明らかとなった。 細胞レベルの電子線トモグラフィーによる立体構造解析については、健常者由来のiPS心筋細胞の凍結置換法を用いた電子線トモグラフィーによる立体構造解析と、COS7細胞を用いたクライオ電子線トモグラフィーによる立体構造解析の実験条件の検討を行っている。前者については、iPS心筋細胞の電子顕微鏡グリッド上での培養条件を決定し、70nm厚の超薄切片を作製した。現在、細胞骨格などの微細構造を保持しつつ良好な染色を得たところであり、今後トモグラフィー撮影へと進み、立体構造解析を行う。後者については、凍結条件の検討を行っており、アクチンなどの細胞骨格が一本一本描出可能な条件が得られ始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MAP4-Kinesin-微小管複合体のクライオ電子顕微鏡構造解析を行い、MAP4による微小管の安定化や細胞内物質輸送の分子機構を解明、学術雑誌へ掲載することができた。また、細胞レベルのトモグラフィーについても、iPS心筋細胞は凍結置換法によりトモグラフィー法まで進み、またCOS7細胞を用いてクライオ電子線トモグラフィー法により立体構造を得られ始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、健常者のiPS心筋細胞のトモグラフィー撮影を行い、良好な立体構築が可能となった段階で、拡張型心筋症由来のiPS心筋細胞を用いた立体構造解析へと移行する。また、COS7細胞を用いたクライオ電子線トモグラフィーの条件検討を進め、iPS心筋細胞のクライオトモグラフィーへと移行する。iPS心筋細胞については、凍結後に試料を薄くする必要があり、FBS-SEMなどを用いた細胞切削技術を導入する。
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Research Products
(13 results)