2019 Fiscal Year Research-status Report
PETによる脳脊髄ミクログリアイメージングによって慢性痛を可視化する研究
Project/Area Number |
18K19588
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
小幡 英章 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (20302482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宿里 充穗 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (20525571)
織内 昇 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40292586)
紺野 愼一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70254018)
加藤 孝一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 室長 (50382198)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ミクログリア / PET / 慢性痛 / 脳脊髄 / P2X受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は慢性痛状態における脳脊髄のミクログリアの活性化をpositron emission tomography(PET)を用いて検出することである。 動物を用いた研究では、神経損傷を行ってから長期間経過したラットでは内因性鎮痛が低下するが、これまでの様々なデータから、脳内ミクログリアの活性化がそれに関与することが示唆されている。共同研究施設である国立精神・神経医療センターにおいて、ミクログリアに特異的な新規PETトレーサーであるtranslocater protein (TSPO)リガンド(18F標識TSPOリガンドX)がすでに完成しており、慢性痛ラットの脳PET研究を行うため、様々な準備を整えている最中である。 一方、臨床研究では将来的に慢性痛患者に脳内ミクログリアのPET研究を行うためのデータを集積中である。慢性腰痛患者を対象としてConditioned Pain Modulation法によって内因性鎮痛の機能を調べており、痛みの強さとの関連を調べるために、①過去4週間の痛みの強さ(10点満点)の平均、②BS-POP、③Pain DETECT、④Pain Catastrophizing Scale、⑤Central Sensitization Indexなどのデータを集積している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに動物の研究では、PET研究を行う前段階として慢性痛時に内因性鎮痛が減弱する機序に関して、ラットを用いて研究を進めてきた。内因性鎮痛機能をnoxious stimulation induced analgesia(NSIA)によって測定すると、神経障害性疼痛モデル(spinal nerve ligation: SNL)を作成して6週間経過したラット(SNL6W)では、NSIAが有意に減弱した。その減弱はTrkBアゴニストの7,8-dihydroxyflavone(DHF)の全身投与で改善した(Suto et al., J Pain 2019;20:600-609)。同様にDHFは脊髄でもTrkBを介してSNL6WのNSIAを改善することを報告した(Kato et al., Anesth Analg. 2019;129:578-586)。すわなち、慢性化した神経障害性疼痛ではBDNF-TrkBシグナルが、鎮痛に関与する神経系を活性化して内因性鎮痛を回復させることが示唆された。逆に内因性鎮痛が減弱する過程においてはBDNF-TrkBシグナルが正常に働いていない可能性がある。このことに脳内グリアの活性化が関与している可能性があると考え、SNLラットを用いて脳内ミクログリアの活性化を免疫染色法で検討した。SNL2Wと正常ラットを用いた比較ではミクログリアの明らかな活性化は認められていない。現在、SNL6Wを用いて検討を行っている。 臨床研究では慢性腰痛患者を対象としてConditioned Pain Modulation法によって内因性鎮痛の機能を調べており、様々な痛みに関するアンケートとの関連を検索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
動物を用いた研究では、共同研究施設である国立精神・神経医療センターにおいて、ミクログリアに特異的な新規PETトレーサーであるtranslocater protein(TSPO)リガンドを用いて、慢性痛ラットの脳PET研究を準備が整い次第開始する予定である。慢性痛のラットモデルはSNLを用いるが、これまでに作成から2週間経過したSNLでは、脳での明らかなミクログリアの活性化が免疫染色法では認められていない。一方、過去の報告においては、神経損傷から4-8週経過した動物で脳内ミクログリアの活性化が認められたとの報告がある。よって、より長期間経過したSNLモデルを使って免疫染色を行ったり、神経損傷からのミクログリア活性化の経時的変化をPETで観察したりする予定である。 臨床研究では慢性腰痛患者の内因性鎮痛をConditioned Pain Modulation法によって評価することを継続し、その他の痛みに関するデータも収集する。並行して人でのPET研究に対する準備を行う。
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Causes of Carryover |
ラットのPET研究のための支出を予定していたが、PETトレーサーの特異性等の問題で、いまだ研究が行われていない。現在、その問題は解決し事務的内な手続きが完了次第、PET研究を行なえるため、次年度は多くの研究費が必要になる。
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Research Products
(6 results)