2018 Fiscal Year Research-status Report
着床を可能にする子宮内膜管腔上皮消失の分子機構の解明
Project/Area Number |
18K19601
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣田 泰 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40598653)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 知子 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (60375441) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 着床 / 受精卵 / 胚浸潤 / 子宮内膜 / 低酸素誘導因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
着床障害は体外受精において良好胚を胚移植しても妊娠しないことで定義されるが、その病態は不明であり、診断・治療法も確立していない。胚対位、胚接着、胚浸潤という着床の過程のうち、本研究では胚浸潤の過程で重要な因子に着目し、胚浸潤の異常が起こる各種の遺伝子改変マウスを用いて、子宮内膜管腔上皮というバリアの消失を契機に起こる胚浸潤のメカニズムを解析した。低酸素誘導因子HIF2αに着目し、Pgr-Creマウスを用いて子宮全体のHIF2α欠損マウスを作成したところ一匹の産仔も得られず完全な不妊であることが判明した。このHIF2α欠損マウスの不妊原因を調べたところ、着床障害、特に胚浸潤の障害が起こり不妊になることがわかった。正常なマウスでは胚と接着した子宮内膜管腔上皮の一部が剥がれて消失することで胚が子宮内膜間質に進入することが可能になり、胚の生存・活性化の指標であるAKTシグナル経路が活性化していた。一方HIF2α欠損マウスは子宮内膜管腔上皮消失が起こらないため子宮内膜間質への胚浸潤がみられず、胚生存シグナル経路は活性化せず、胚の細胞死が起こっていた。これらの結果から、子宮内膜のHIF2αが胚浸潤に必須の因子であることが示された。次にこのHIF2αの作用が子宮内膜間質によるものなのか、子宮内膜管腔上皮によるものなのかを明らかにするため、Amhr2-Creマウスを用いた子宮内膜間質のHIF2α欠損マウスとLtf-Creマウスを用いた子宮内膜上皮のHIF2α欠損マウスを作成したところ、子宮内膜間質のHIF2α欠損マウスが不妊であった一方、子宮内膜上皮のHIF2α欠損マウスは正常に産仔を得たことから、子宮内膜間質のHIF2αが機能的に重要で、子宮内膜間質からの管腔上皮の剥離を誘導し、じかに胚と接することで胚の生存を促し、胚浸潤を可能にしていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
HIFに関する研究では順調に成果を得ている。これらの成果をさらに発展させ、次年度の研 究の更なる進展が大いに期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
順調に進展し成果を上げているため、研究計画通りに進める予定とする。
|
Causes of Carryover |
RB欠損マウスの繁殖において、当初の想定に反し実験に必要な成体数を得られず研究が遅延した。研究遂行上必要な成体数を得ることが必要不可欠なため、このマウスの繁殖を4か月延長する必要が生じた。繁殖期間延長と解析の遅延に伴って繰越を行い、マウス管理費(その他)、マウス組織を用いた解析に関わる試薬・消耗品(物品費)に充てる。
|
Remarks |
【毎日新聞掲載(2018年11月17日)】不妊の要因か「慢性子宮内膜炎」 治癒後に改善 【朝日新聞掲載(2018年9月8日)】原因不明の不妊症、内膜炎が影響か 治療後に妊娠率向上
|
Research Products
(20 results)