2018 Fiscal Year Research-status Report
網脈絡膜血管疾患において液性免疫が組織学的変化を惹起する分子機構
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18K19610
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻川 明孝 京都大学, 医学研究科, 教授 (40402846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 勇貴 京都大学, 医学研究科, 助教 (00739089)
大音 壮太郎 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (10511850)
池田 華子 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20372162)
村上 智昭 京都大学, 医学研究科, 助教 (50549095)
亀田 隆範 京都大学, 医学研究科, 助教 (60569961)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 網膜静脈閉塞症 / 糖尿病網膜症 / 糖尿病黄斑浮腫 / 自己抗体 / 光干渉断層計 / 光干渉断層計アンギオグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
網脈絡膜疾患の診断および病態把握に関して、最新の眼底イメージング機器を用いた解析を行い、多くの論文を海外誌に掲載した。加齢黄斑変性や中心性漿液性脈絡網膜症は、近年注目されているpachychoroid spectrumに関する知見を見出し、CFHやVIPR2などの新たなゲノム多型との関連を報告した(Hosoda Y, et al. PNAS. 2018; Takahashi A, et al. Ophthalmol Retina 2018)。 網膜静脈閉塞症に関しては、その発症機序で最も重要な洞動脈交叉部の詳細な形態変化を、光干渉断層計アンギオグラフィー(OCTA)を用いて解析し報告している。また、その臨床的な意義として、一般的な治療法である抗VEGF療法の効果との関連を明らかにした(Miwa-Iida Y, et al. Sci Rep 2019)。OCTAによる評価により、病態進行の中心的な役割を果たす無灌流域形成の特徴も報告した(Ghashut R, et al. Retina 2018)。 糖尿病網膜症では、OCTAを用いた無灌流域の評価により、灌流の重複性が血流障害の進行抑制に強く関与することを発見した(Yasukura S, et al. IOVS 2018)。また、それに関連して、extramacular white spotsを新規病変として報告した(Morino K, et al. IOVS 2019)。本研究では、糖尿病黄斑浮腫患者の血清における自己免疫のバイオマーカーとして、自己抗体を探索した。新規自己抗体として、抗fumarase抗体と抗hexokinase 1抗体を同定し、その定量的評価を行った(Yoshitake S, et al. Diabetologia 2019; Yoshitake T, et al. Sci Rep. 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床的に重要な網脈絡膜疾患の包括的な眼底イメージング研究に関しては、おおむね順調に進行しており、実際に多くの海外誌で報告している。特に、光干渉断層計(OCT)での神経障害の評価から、各々の疾患における障害部位が特定の網膜層(視細胞層や神経節細胞層など)に眼局することを見出している。また、OCTAを用いた網膜血管病変の解析では、相当部位の血管障害を伴っていることが明らかになった。これらから、自己免疫機序により障害される網膜病変が存在することが示唆され、その分子機構を明らかにすることが臨床的に重要であると考えられた。これらのことから、当該期間に、自己免疫に関連する可能性が高い臨床的な疾患、および、病変をある程度同定しつつ、絞り込むことができたと考える。 また、糖尿病網膜症に関しては、血清中の自己抗体を用いたスクリーニングから、実際に抗網膜抗体を認めた。そのうち、二つの新規自己抗体を同定し、その診断的価値を報告している。特に抗fumarase抗体は、臨床的に糖尿病黄斑浮腫における視力低下、視細胞障害との関連があること、また、translational researchによりその病的な機能が存在することを示した。これらのことから、本研究において液性免疫のうち、自己抗体による神経網膜の障害のメカニズムの一端を明らかにしたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病黄斑浮腫に関する血清中の自己抗体は多数存在することがスクリーニングでわかっている。今回見出した2つ以外の自己抗体も同定を試みる予定にしている。今回同定した自己抗原は主に視細胞や外網状層に発現していた。しかし、糖尿病網膜症では神経節細胞層、網膜静脈閉塞症などでは、神経線維層から内顆粒層までの内層が全体的に障害される。そこに発現しているタンパクに対する自己抗体も積極的に探索する予定にしている。 また、今回糖尿病黄斑浮腫に関して見出した自己抗体が、加齢黄斑変性や網膜静脈閉塞症などの他の網脈絡膜疾患においても上昇しているかを、ELISA法で定量的に解析する予定にしている。そのことで、診断的価値や共通の病態、もしくは、疾患毎での特異的な変化を解析する予定にしている。 本年度では、眼内液におけるサイトカインの変化も検討予定にしている。糖尿病網膜症において自己抗体が産生されることから、病態進行に自己免疫反応が強く関与することが推測される。抗原提示細胞、helper T細胞、effector細胞(形質細胞やcytotoxic T細胞)と、自己免疫のカスケードが知られている。サイトカインがその制御に重要な役割を果たすことは免疫学では有名であるが、網脈絡膜疾患において、自己免疫を発動するサイトカインは不明である。IL-6, IL-8, MCP-1などのサイトカインが、網脈絡膜疾患の悪化と共に眼内で増加することが知られている。自己抗体などを指標に液性免疫に強く関与するサイトカインの同定を試みる予定にしている。
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Causes of Carryover |
当該年度において、基礎研究に要する消耗品費用が想定以下であり、使用額が低く抑えることができた。次年度(2019年度)には、眼内サイトカイン測定などにやや高額の消耗品が必要となるため、残額を次年度にまわすことになった。
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Research Products
(38 results)