2019 Fiscal Year Research-status Report
細菌はがんを起こすのか? 代謝を指標とした「細胞-細菌叢インタラクション」の解明
Project/Area Number |
18K19629
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科, 教授 (60183852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲尾 純平 東北大学, 歯学研究科, 講師 (20400260)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞代謝 / 代謝阻害 / ジンジバリス菌 / ベイヨネラ菌 / 有機酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度確立したリアルタイム代謝測定システムを用いて、正常上皮細胞(HaCaTなど)の細胞代謝に及ぼす細菌因子の影響を検討した。細菌として、歯周病関連細菌として細胞への作用が大きいと想定されるPorphyromonas gingivalis(Pg)と、口腔内のどの部位においても細菌叢の多数派を占めるVeillonella atypica(Va)を選択し、(1) 細菌培養液そのもの、(2) 培養上清、そして(3) 細菌の3種の試料を用意し、細菌培養用培地をコントロールとして、正常上皮細胞と共存させ、細胞代謝活性(グルコース代謝活性)への影響を定量測定した。 その結果、(1) 細菌培養液そのもの、および、(2) 培養上清が、濃度依存的に細胞のグルコース代謝活性を阻害した。このことから、細菌代謝産物などの細菌菌体外分泌物が、細胞代謝を阻害するものと推測された。培養上清中の代謝産物(有機酸)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定したところ、Pgはイソバレリアン酸、酪酸、イソ酪酸、プロピオン酸、酢酸を、Vaはプロピオン酸、酢酸を主に産生していたことが明らかになったことから、それぞれの有機酸を培養上清と同程度の濃度に調整し、細胞と共存させ、細胞代謝活性への影響を定量測定した。しかし、有機酸単独、さらには複数の有機酸の混合でも、細胞代謝活性には影響はなかった。 以上のことから、PgもVaも正常細胞の代謝活性を阻害するが、その本体は代謝産物である有機酸ではなく、培養上清に含まれる他の物質であると予測された。現在、その物質の同定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、代謝産物による細胞代謝阻害を予測していたが、上記のように、それ以外の何らかの物質が細胞代謝阻害を起こしていることが明らかになった。このため、その物質の同定を行う研究が新たに必要となり、当初より、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
細菌培養上清に含まれる細胞代謝抑制物質の同定を進めるとともに、対象細胞種を口腔扁平上皮癌細胞(HSC-2など)へ拡大する。また、対象細菌を、がん病巣細菌叢に多いフゾバクテリウム、健全部に多いレンサ球菌へ拡大する。次いで、代謝中の細胞について、解糖、ペントースリン酸回路、クエン酸回路、アミノ酸代謝を対象にメタボローム解析(CE-TOFMS装置:既存)を行い、代謝の変容を解析する。加えて、責任酵素やシグナル分子等を対象にDNAmicroarray、RT-PCR等による分子生物学的解析を行うことで、細胞の影響のメカニズムを探索する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究から、細菌菌体外成分が細胞代謝を阻害することが明らかになったが、その責任物質はこれまでに報告されていた有機酸ではなく新規物質である可能性が出ている。その物質の同定実験を集中的に行った結果、今年度使用額が予定より少なくなった。次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせて、次年度計画遂行のために使用する予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] Metabolomics of Oral Microbiome2019
Author(s)
Washio J, Abiko Y, Dimas Prasetianto Wicaksono, Yamamoto Y, Takahashi N
Organizer
4th Asia Pacific Regional Congress of the International Association for Dental Research
Int'l Joint Research / Invited
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