2018 Fiscal Year Research-status Report
Trial to greatly contribute in the connectome study by evaluating its related brain pathways underlying the processing of masticatory sensations with innovative techniques.
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18K19641
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (90201855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古田 貴寛 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (60314184)
佐藤 文彦 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60632130)
富田 章子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10585342)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 神経回路 / システムニューロサイエンス / 咀嚼 / 筋感覚 / 深部感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界中で競われている脳内コネクトーム研究に口腔顎顔面にかかわる脳機能の重要性を反映させるため、歯学で重要な咀嚼筋筋紡錘感覚の脳内コネクトームを、近年開発された革新技術を応用して解明することを目指した。 ラットを深麻酔し、咬筋神経の電気刺激で誘発される神経応答を、脳内に刺入したガラス管微小電極から細胞外記録して、咬筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核に存在する単一ニューロンを同定した。このようにして電気生理学的に同定された単一三叉神経上核ニューロンの標識を試みた。先ず蛍光蛋白を発現させるプラスミド (pCAG-palGFP) を注入する電気穿孔法を試みた。極めて難しい手法であった。電気穿孔法で脳の深部に存在する(三叉神経上核も深部の橋の背部に存在する)単一ニューロンを標識することは、これまで言われてきた通り、極めて困難であることがわかった。 そこで次に、神経トレーサーであるbiotinylated dextranamine(BDA)の細胞近接注入を、上記のように電気生理学的に同定された単一三叉神経上核ニューロンの標識に試みた。その結果、標識成功率は電気穿孔法よりは良好であったが、試みたラットのうちの数匹のみで単一三叉神経上核ニューロンの細胞体の標識に成功した。しかしながら、軸索は、細胞に近い部位のみとそこから分岐する軸索分枝のみ(これらは、細胞体の近傍のみに終止した)が標識されただけであった。本研究の目標である視床や小脳などの遠位の投射部位を含む単一三叉神経上核ニューロンの軸索投射の全形を標識するためには、我々のBDAの細胞近接注入法のskillをあげる必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように、脳の深部に存在する単一三叉神経上核ニューロンの全形の標識には、電気穿孔法は極めて困難であることがわかった。より多くの動物を用いて手技の向上を図れば、標識の成功率を上げ得ることは可能とも考えられたが、他の方法(BDAの細胞近接注入法など)を使って標識可能であるかどうかを先に検討することの方が重要と考えた。その結果、BDAの細胞近接注入法の方が、脳の深部に存在する単一三叉神経上核ニューロンの標識が可能であることがわかった。ただし、2018年度末での手技では、上記のように、遠位の投射部位を含む軸索投射の全形の標識は難しいことがわかった。Targetの単一ニューロンの細胞膜により長時間接触させるなどの改良を加えれば、より遠くの軸索までの標識は可能であるようにも思えた。 このように用いた2方法は、2018年度末の時点では、単一三叉神経上核ニューロンの全形の標識を成功させてはいないが、両方法の長所と短所が明確にできた。この結果は、脳の深部に存在する単一ニューロンの全形の標識方法の開発をも目的としている本研究にとって、重要な情報を提供している。よって、進捗状況は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度末時点では、用いた蛍光蛋白を発現させるプラスミド(pCAG-palGFP) を注入する電気穿孔法とBDAの細胞近接注入法のいずれでも、単一三叉神経上核ニューロンの全形の標識を成功できていない。しかし、用いる手技が向上すれば成功する可能性も上がるので、2019年度もこれらの方法を用いた実験、特にBDAの細胞近接注入法を継続して試みたい。 BDAの細胞近接注入法によっても希望する結果が得られない時は、まだ試みていない、シンドビスウイルスベクター感染法を用いた単一ニューロン標識法を試行する。この方法は、我々の研究室で、三叉神経尾側亜核の表層に存在する単一ニューロン(痛覚を伝達するニューロンの可能性が高い)の標識に成功したばかりであるので、手技の信用性、有用性は高い。しかし、この方法には、標識される細胞の機能の同定が困難(上述の2方法では、電気生理学的に標識ニューロンの同定が済んだ後に標識を試みている)という欠点を持っている。ではあるが、我々がtargetとするラットの三叉神経上核には、三叉神経中脳路核ニューロンによって咬筋筋紡錘感覚が大量に入力することがわかっているので、ウイルスベクターが感染した三叉神経上核ニューロンは咬筋筋紡錘感覚を伝達している可能性が極めて高いことになるので、この方法も試行する価値があると思われる。
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Causes of Carryover |
(理由)研究助成金の申請書に記載したように、31年度も実験を遂行するので、それに必要な消耗品等の購入が必要である。また、実験の遂行と得られる研究結果の学術的評価を検討するために、学界に出席して情報交換が必要である。 (使用計画)31年度の経費の使途は研究助成金の申請当初と基本的に大きくは変わっていない。しかし、実験回数を当初の計画よりも大幅に増やす必要が出てきたので動物、器具、薬品などの購入量を増やす予定である。以上により計画当初よりもより多めの支出を行う予定である。
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Research Products
(14 results)