2018 Fiscal Year Research-status Report
寝床環境中の細菌叢は褥瘡感染を引き起こすか:感染発症メカニズムの新パラダイム
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18K19669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仲上 豪二朗 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (70547827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真田 弘美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50143920)
峰松 健夫 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (00398752)
須釜 淳子 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (00203307)
大貝 和裕 金沢大学, 健康増進科学センター, 准教授 (40706983)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロバイオーム / 皮膚常在細菌叢 / 嫌気性菌 / ディスバイオーシス / バイオフィルム / 寝床環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、寝床環境中の細菌叢に着目し、「創傷感染バイオマーカーの開発及び慢性創傷感染抑制ケア方法の確立」を目指す。現在の感染制御は抗菌薬や消毒薬などにより褥瘡部の細菌を死滅させる姑息的な方法であり、感染の原因となる細菌の根本を絶つ方策は確立していない。すなわち、創部の細菌そのものへのアプローチではなく、細菌の由来である寝床環境へのアプローチが看護ケアとして重要といえる。そこで、創傷感染予防ケア介入確立のために、寝床環境の細菌叢が創傷感染を発症させるメカニズムを解明することを目的に本研究を実施する。本研究はこれまで研究対象となってこなかった、細菌叢形成の主要な場としての寝床環境に着目し、宿主と微生物の共生関係の破綻が引き起こす創傷感染メカニズムの解明を目指す。 平成30年度は褥瘡と寝床環境の間に最近の伝播が起こっているのかを検証した。褥瘡、寝床環境、皮膚から採取した細菌叢サンプルをメタ16S解析に供した。非加重結合法に基づきサンプルを3つのクラスタに分類し、同一患者内での相違を調査した。分類の妥当性評価のために主座標分析を行った。対象創部10例中、8例で創部と寝床環境のサンプルが同一のクラスタに分類され、そのうち4例では皮膚サンプルも同一クラスタに分類された。主座標分析で同一クラスタのサンプルは近くにプロットされたことから、創部と寝床環境中の細菌叢の関連が示唆された。さらに、得られたシークエンスの100%一致するものをoperational taxonomic unitsに割り当てることで、株レベルで細菌を同定し、患者内の異なる部位で伝播が起こっているのかを検証したところ、95.5%の創部で少なくとも一種類の細菌株を複数の部位で共通して有していた。共通して保有している細菌株の種類の中央値は98であり、多くの細菌が伝播していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、創傷領域ではこれまで全く着目されてこなかった寝床環境からの細菌叢サンプルの採取からメタ16S解析までを実施し、創部との細菌の伝播を示すことで本研究のオリジナリティである寝床環境から創部への細菌の曝露の事実を明らかにすることができた。サンプル採取方法や解析法について多くの試行錯誤を実施し得られた結果であり、これ以降に続く研究の基盤を構築できたことから、おおむね順調に経過していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
寝床環境と創部の細菌叢の関連が明らかになったことから、臨床での褥瘡管理において課題となっている多くのリサーチクエスチョンについて、平成30年度に取得したデータの二次データ解析の実施および、褥瘡感染発症メカニズムについて細菌叢の観点から検証を進める。
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Causes of Carryover |
試薬の購入およびメタ16S解析解析外注の関係で約1万7千円の費用が未使用となったが、次年度の試薬購入費に充てて研究を実施する。
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Research Products
(1 results)