2018 Fiscal Year Research-status Report
自発運動を惹起する消化管スイッチとそのシステムの探索
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18K19745
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
志内 哲也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (70372729)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | Exercise / Motivation / Gut / Dopamine |
Outline of Annual Research Achievements |
運動が健康に良いことは知られているが、行動に移すことは容易ではない。習慣的な運動は、貯筋を促してサルコペニアを予防するだけでなく、認知機能や情動の安定など、健康な脳の保持・増強にも大きく貢献する。しかし、ヒトに対して自発的な運動を促すことは難しく、臨床現場における長年の課題である。げっ歯類を用いた研究においては、強制的に運動をさせる手段として、ペプチドや薬物の脳内への直接投与などが用いられる。しかし、ヒトへの応用を考えるとき、脳内への直接作用は危険であるため、末梢からの介入が必要である。 腸は第2の脳と言われ、腸脳相関は生体の中で重要な情報伝達経路であるが、運動へのモチベーションを、経口投与で刺激可能な消化管からアプローチする研究は世界的にも類を見ない。また、腸管上皮を刺激するが吸収されないアゴニストが開発できれば、新規薬剤の作製に貢献できる。さらに、ドーパミンが有する報酬作用を利用して、自発的な運動を促す健康的な報酬作用が増強できれば、習慣的な運動につながることが期待できる。そこで本研究は、高運動志向性マウスの消化管から、その候補遺伝子を発掘し、運動意欲を高める新たな腸脳相関システムを開拓することを目的とした。 回転かご運動が多い高運動志向性マウスおよび回転かご運動が少ない低運動志向性マウス同士を交配させ、5世代目まで確立した。それらのマウスから消化管上皮細胞を採取し、遺伝子発現の違いを網羅的に比較するため、DNAマイクロアレイをかけている。また、運動志向性の違いが、消化管上皮以外の組織にある可能性も探るため、骨格筋などの運動器や、司令塔である脳部位に関しても採取した。今後は、骨格筋の分化・増殖関連や代謝関連の遺伝子発現、あるいは脳部位におけるモノアミン量を定量する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回転かご運動が多い高運動志向性マウスおよび回転かご運動が少ない低運動志向性マウス同士の交配を継続した。運動量の違いにより、生殖能力が変化する可能性があったため繁殖するか不明であったが、遺伝要素が強く出る5世代目まで確立できた。それらのマウスから消化管上皮細胞を採取し、DNAマイクロアレイをかけている。その結果はまだ出ていないが、それをもとに今後の計画を立てる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、消化管上皮細胞のDNAマイクロアレイで挙がった候補遺伝子に関して、ウエスタンブロット法でタンパク質の発現を確認・定量する。上記で見出したターゲット分子のアゴニストをマウスに経口投与し、自発的な律動運動である回転かご運動が増加するか確認し、ターゲット分子を決定する。 本研究のゴールは、腸脳相関を利用した自発運動の亢進を前提としている。そこで、消化管から求心性神経を介して中枢ドーパミンニューロンを活性化する経路に焦点を絞り、ターゲット分子アゴニストの経口投与がその経路を活性化するか確認する。
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Causes of Carryover |
DNAマイクロアレイの外注支払いが次年度になり、それに伴い、物品費の支出も次年度に繰り越したため。 繰り越した研究費は次年度に、DNAマイクロアレイの外注への支払いと、その結果を元にしたリアルタイムPCRを行うためのキットや試薬などを物品費として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)